【作り手インタビュー】宮島ビール、故郷とビールに込めた想い

お酒

宮島を感じながら味わう特別なビール

宮島を感じながら味わう特別なビール

最近よく「クラフトビール」という言葉を耳にしませんか?これは規模の小さな醸造所で作られたビールのことなんです。作り手の想いが込められ、独自の技が光るクラフトビールはどれも本当に美味しいものばかり!

その美味しさの秘密を知りたい!と週の半分はビールを飲む愛好家のスタッフが、作り手の想いに触れるインタビュー企画を立ち上げました。

今回は、厳島神社で知られる広島県廿日市市にある宮島でクラフトビールを醸造している、宮島ビールさんに徹底インタビュー。

瀬戸内海を眺めながら味わう女性にも大人気な宮島ビール。
フルーティーでなめらかな味から、男性にも人気な柑橘系の香りと爽やかな苦みのある味まで幅広い品ぞろえも魅力です。

宮島ビールの誕生から醸造秘話、ビールの特徴、今後の展望について、宮島ビールの創業者であるCEO有本樹生さんに詳しく語っていただきました。

宮島ビールのはじまり

【Q:なぜ宮島でビールの醸造を始めたいと思ったのですか?】

このお話はとても長くなります。私は宮島の老舗旅館の20代目当主として生まれてきました。しかし、昭和63年の年の瀬に旅館は建物の老朽化と消防法の改正により止むなく廃業することになりました。
平成2年に父の急逝があり、旅館の跡地は駐車場にしました。その後15年程、主に東京でビールとは無縁の会社に勤務していました。そして40歳を超える頃から故郷の宮島がとても懐かしく思えてきたんです。と同時に、ご先祖様からいただいた土地を有効活用しなくてはという想いが高まってきました。

43歳の時にリーマンショックが起こり、暫くして、勤務していた外資系金融機関から退職勧告を受けることに。さすがに落ち込んでいた時、人生の師と尊敬していた方から、「何のために生きているかを考えてみなさい」と言われ、自分の人生の目的をじっくりと見直してみました。小旅行をして、本を読んだりもしました。そして辿り着いたのが、「他人を幸せにする喜びを感じながら生きる事が、自らの幸福に繋がる」ことです。自分の幸福を追求しても必ずしも幸福感が続くとは限らないと悟りました。人生観が180度変わったんです。

その後、長年の懸案事項だった、駐車場にしている土地の有効活用を考えるために故郷の宮島に一時的に帰りました。すると、宮島もリーマンショックの影響を受けて、不景気のドン底にあり、子供の頃から知っている方々が元気を失くしていたんです。ここで何か故郷の役に立てることはないかと強く思ったんです。

なお、この辺りのことは弊社のホームページ、宮島ビールストーリーに書いてます。

【Q:なぜあえてビールを選んだのですか?】

長年営業している近隣のお店と競合する関係になりたくないと思いました。ライバルになりたくなかったんです。感謝されたいと思いました。「ライバルを倒しても虚しさが残る」とあった本の影響もありました。宮島オリジナルのビールを作ることができれば、近隣や海外からの観光客が増え、地域活性化にも繋がるのではないかと考えたんです。

土地の前には穏やかな瀬戸内海が広がっています。この絶景を楽しみながらビールを飲んだらさぞかし美味しいだろう。そう思ったのが宮島ビールの始まりです。

【Q:どのようにビール造りの技術を学んだのですか?】

ビール造りの技術

宮島でブルワリーを始める前に、新潟県と山口県のビール会社で経営やビールの基礎知識について学びました。その後、著名な醸造家を会社に招くことが出来て、彼から色々と学んだ結果、美味しいビール作りの素地が出来ました。

【Q:いつ頃から宮島での醸造を開始されたのですか?】

2年前の2018年からです。やっと夢が叶ったという感じでした。初めは試行錯誤の繰り返しで大変な事も多くあったんです。第1ステージの終了を感じました。

【Q:宮島ビールはどんな風に飲んでもらいたいですか?】

宮島に来て、浜辺を散歩しながら、飲んで欲しいですね。晴れた日に海を見ながら飲むと格別に美味しいんです。

また、宮島まで来られなくても、毎日の食卓で宮島に思いを馳せながら飲んでいただけると嬉しいです。

ビール造りのこと

【Q:ビール造りで1番こだわっていることはなんですか?】

醸造や瓶詰めに使う機械

最も大切にしている事は地元のものを使うことです。広島県は美味しい果物などが獲れます。宮島の天然水もスッキリして、とても美味しいです。これらを使ってオリジナリティ溢れる、一風変わったビールを作れば宮島にお客様をお招き出来ると考えています。これらは当社のビジョンにもマッチします。

次に地元の食材を使った料理に合うかどうかを考えます。広島には美味しいモノが沢山あります。これらと上手に合わせられるように、基本的に飲みやすいビールにしています。

ただし、クラフトビールの特徴である「個性」や「オリジナリティ」も欲しいところです。飲みやすさとこれらを両立させるのは中々難しいことですが、ビールの種類を増やすことで対応しています。

最後は、衛生管理です。ビールはアルコール度数が低いので、少しの雑菌でビールに酸味やおかしな臭いが出ます。ビールって繊細なんです。だからこそ、醸造や瓶詰めに使う機械は頻繁に洗浄しています。ブルワー(醸造家)は綺麗好きでないと務まりません。

【Q:おすすめの飲み方と、どんな人に飲んでもらいたいですか?】

宮島ビールは心を込めて丁寧に作られています。なのでブルワーの思いも感じながら、味わって飲んで欲しいです。
10℃くらいが適温。香りが引き立ち、フルーティさも増すんです。飲む10分ほど前に冷蔵庫から出しておくと、飲み頃になります。さらに少し時間が経ってから飲むことで異なる味わいが楽しめます。
クラフトビールファンはもちろんですが、ビールが大好きという方々、またビールが苦手という方々にも飲んで欲しいですね。ビールって同じじゃないんだ、と感じてもらえたら本当に嬉しいです。

ビールの種類

【Q:緑・白・黄、それぞれの違いは何でしょうか?】

ビールの種類

緑のペールエールは柑橘系の香りがしてクラフトビールの中では王道のビール。さっぱりとした苦味があるので、男性・女性を問わず人気です。
お客様からの評価も高く、インスタなどで「ビールってこんなに美味しいんだ」という声をよく聞きます。下面発酵ですが、雑味を除いたすっきり感のあるビールです。

白のヴァイツェンはバナナのような香りのビール。でも実際にバナナを使っているわけではないんです。ビールは基本的に大麦で作るのですが、ヴァイツェンは小麦の麦芽を半分以上使っています。
小麦の麦芽と酵母の作用によって、フルーティーでほんのりと甘い味わいになるんです。ヴァイツェンは女性に特に人気なんですよ。

ゴールドのカラメルブロンドは、コクのあって少し甘い風味。
創業のビールです。延べで300人を超える知人・友人の投票で選ばれた味なんです。
お酒には「若い」や「熟成」という言葉がありますが、トンガリ感が取れた後に生まれる熟成の旨味・甘みが特徴のビールです。最近は白いご飯に合うというSNSを見ました。

【Q:缶のデザインへのこだわりを教えてください。】

缶のデザインには、宮島のシンボルとも言える大鳥居をあえて入れないことにこだわっているんです。お土産物屋で大鳥居をシンボルにした商品を見飽きたお客様に「またか」と思わせたくないんです。大鳥居を入れずにデザインする、と考えたときに鹿と紅葉を思いつきました。

よく見ていただけると分かるんですが、実は3種類それぞれで鹿の数が違うんです。カラメルブロンドが1頭、ペールエールでは2頭、となっていますよね。
これはカラメルブロンドが最初に作られたからなんです。1頭だった鹿が、第2弾のペールエールで2頭、つまり夫婦になって、第3弾のヴァイツェンで小鹿が生まれて3頭で親子になる。缶ビールのラベルデザインに私の様々な想いと、当社のヒストリーを感じてもらえば本当にありがたいです。

景色もごちそうの宮島ブルワリー

宮島ブルワリー

宮島ビールと料理が楽しめる「MIYAJIMA BREWERY(宮島ブルワリー)」
1階のビアショップでは、ここで作ったできたてのビールが楽しめるスペースです。
3階にあるレストランは瀬戸内海の美しい景色が眺められる素敵な空間。これぞ宮島、と言える大鳥居や五重塔が眺められるんです!

青々と広がる海や空を眺めながら飲むビールは、一味違った味わいがありそうだと思いませんか?

【Q:ブルワリーの魅力について教えてください。】

宮島名物の牡蠣

ブルワリーでは瀬戸内海を一望しながら地元の食材にこだわったお食事を味わうことができます。

提供している料理のメニューも、ビールの味の違いがはっきりすることを念頭に作っています。
私個人としては、フライドポテトやポテトサラダは多種多様のビールの違いをはっきりさせてくれる、クラフトビール好きには最高のツマミだと思っています。もちろん宮島名物の牡蠣ともよく合います。

【Q:宮島の特産品を使ったビールもあるようですね。】

宮島はちみつケルシュ

その通りです。ビールをきっかけに、広島や宮島の特産品をもっと知って欲しいと思っています。

写真は「宮島はちみつ」を使ったビール「宮島はちみつケルシュ」です。島の北側にある世界遺産指定された原始林で採取された「宮島はちみつ」は、綺麗な水と新鮮な空気の中で育った花から取るため、みずみずしくて爽やかな香りがします。それをビールに使用して、はちみつの甘くて複雑な香りを引き出しています。この「宮島はちみつケルシュ」は、ほんのりとした甘みとすっきり感が同時に味わえるビールです。飲む時にふわっとはちみつの香りがするのも魅力的だと思います。特に女性にオススメです!

また、デコポンと伊予柑をふんだんに使った、瀬戸田デコポンホワイト。フルーツを使ったビールは風味が長持ちしにくくて、2週間程度で味が変わってしまうことがあります。しかし、当社のタンクは500Lと比較的小柄です。仮に一日50L(150杯)売れれば10日でなくなります。実際には取引先に卸したり、瓶で販売することでもっと回転を良くしています。

自家醸造で隅々までグリップしているからこその「本当に特別なビール」なので、ぜひとも飲んでみていただきたいです。

他にも、日本では珍しいオイスタースタウトという黒ビールも醸造しています。
宮島産の牡蠣殻と燻製したムキ身を使用しています。

今後の宮島ビールの展望について

【Q:宮島ビールを今後どのようにしていきたいですか?】

今後もオリジナリティ溢れるビールを作りたいです。
最近では散歩がてら来られる近所のお客様が増えました。とても嬉しいです。

いま、葡萄を使ったビールを作っています。赤ワインの一次発酵で使用した葡萄の搾りかすを使ったビールです。私がこれまで試したぶどうのビールは甘味が強調された商品がほとんどですが、搾りかすを使うことで甘味が抑えられた味になります。宮島ビールの醸造技術で美味しい葡萄のビールを作りたいと思います。発売開始前ですが、すでに置かせて欲しいというありがたい依頼を取引先から受けています。
瀬戸田デコポンホワイトもそうですが、大手では作れないような地域の名産品を生かしたビールにしたいです。

他にも廃棄される食材、例えばホテルの朝食で余ったパンを使ったエコなビールを考えています。

ここでしか飲めないクラフトビールで宮島観光をより一層楽しんで欲しいですね。

将来的にはもっと「広島」をアピール出来るビールを世の中に出したいです。
実は、私の母と森川醸造長の祖母は被曝しています。地球上で世界に向けて平和をアピール出来る最も強い単語が「HIROSHIMA」です。日常生活にとても近い、ビールというドリンクで世界中に平和の貴さを訴えられれば素晴らしいことだと思っています。
「戦争なんて止めてビール飲んで一緒に笑おうよ!」こんなコピーがついた缶ビールを紛争地のスーパーに並べられたら、何かの役に立てるかも知れないと考えているんです。

飲んでみたい、そう思わせてくれるクラフトビール

故郷、宮島への想いから、現地で醸造されたビール。
インタビューをさせていただいて、有本さんの宮島やビールに対する熱い想いがひしひしと伝わりました。
宮島ビールはこれからもまだまだ進化を遂げて、たくさんの美味しいビールを味わわせてくれそうだと思いませんか?

お話を伺っていて、ついつい私も飲みたくなってしまいました。
種類があるからこそ、インタビューの内容を踏まえて飲み比べてみるのも楽しそうですよね。

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