素敵なポートランダーに聞く
これからの人生を考えるヒント#06

世界のこと

ヴェイル・フレッチャーさん

ヴェイル・フレッチャーさん

ポートランドに暮らしながらいきいきと働く女性たちを紹介する『PORTLANDERS』。
第6回は『The Croft』創業者のヴェイル・フレッチャーさんです。
Veil Fletcher/The Croft founder
(ヴェイル・フレッチャーさん/『The Croft』創業者)

The Croft 01

まず案内されたのは、以前取材したジェシカさんの建築家であるご主人が設計した納屋。「プロにも一部頼んだけれど、主人のグレッグががんばって建てたのよ」とヴェイルさん。そこで彼女が最初に見せてくれたのが一頭の羊の毛皮。先日刈ったばかりだというその毛皮は、わたしたちが想像していたよりもずっと大きいものでした。「触ってみて。ちょっとしっとりとしているでしょう? これを毛糸にして、この島に住んでいる藍染めの作家に染めてもらう予定なのよ」

「納屋ではワークショップを開催したり、『ポートランドフードスワップ』というコミュニティでは参加者がみなジャムなどの瓶詰めの食べ物を持ってきて交換するイベントなんかをやったりしているわ。冬には薪でストーブに火をつけてスープパーティをやったり収穫祭をやったり、ハチミツをつくるパーティをしたりね」

The Croft 02

広々とした草原を前に、元ティーバイヤーのご主人が淹れてくれたお茶をいただきながらインタビューが始まりました。「この場所はもともと羊がいた土地で、羊と一緒に土地も買ったのね。アメリカの基準からすれば小さいけれど、メインハウスを建てて、ソーラーもつけたパッシブハウス(省エネルギー住宅)にした。ここに来た理由のひとつは、小さな家に住みたかったから。環境への負荷も小さくしたかったし、土に近い暮らしをしたかった。いろんな生物と一緒に暮らしたかった。羊、ミツバチ、アルパカから毛糸をつくる。20のハチミツハウスでミツバチからハチミツをつくっている。自分たちの持続可能なサイクルの中で暮らせるようにしているわ。2000本のブルーベリーの木は40年前からここにあったもの。たくさんの野菜、トマト、キュウリ。藁も作っているわ」。インタビューをしていた脇に藁の畑があり、5メーター四方のスペースが凹んでいた。風の影響かなと聞いてみると、「そこでは鹿のファミリーが昨夜寝ていたのよ」と笑いながらヴェイルさんが言う。

The Croft 03

「ここで獲れたハチミツを味見してみる?」とヴェイルさん。濃い、けれど透き通った味。もちろん、添加物もなにも加えられていない、自然に育った素材そのままの味。「アメリカの農業というのは大規模でやるのが普通だけど、わたしはそんな風にはやりたくなくて。たとえばこのハチミツ。蜂というのは2マイル(約3キロ)圏内の植物を移動して蜜を得るのだけど、ハチミツの成分にはその蜂が得た花粉なども含まれているのね。この地域という小さな区域の養分が注がれた食べ物を食べると体内に免疫ができるの。アレルギーに強くなる。蜂がいて、植物があって、動物もいて、それらを育む大地がある。これらがシステムとして循環していくこと、もちろんその中に人も含まれる。それが生態系を戻してくれる。小さいけれど、これがマイクロエコシステムの考え方。」

「ニューヨークの郊外で生まれ18歳までいて、大学はマンハッタンのNYU。それからマサチューセッツ、ノースカロライナ、ニューメキシコ、カリフォルニア・・・呼ばれれば全米各地の大学に行ったわ」ポートランド大学で『environmental conflict』(環境同士の対立・衝突)〜土地がどう使われているか、土地はどう活用されているか、人間の視点でのエコツーリズムの在り方、動物からの視点ではこの土地はどうあるべきか? 今と比較して考えたときに生ずる「衝突・対立」は何なのか〜を研究している。

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ポートランドに住もうと思ったのはなぜ? と聞いてみると「動物と住みたかったというのはあるわね。ここはリバーアイランド。マンハッタンの2倍の大きさがあるけれど、人口は1000人。野生動物を守るファーマーが住んでいい土地よ。カナダとメキシコを行き来する渡り鳥の中継地。そんな鳥たちと季節を感じながら暮らしたかった」ここは、ヴェイルさんが大学で教えていることを実践する場ですね? と言うと「That’ right.そうね、ここはTest labよ」と言う。「研究室ね、どうやって人間が生態系を傷つけることなく幸せになれるかということを実験している場所」。 栽培しているブルーベリーの30%は鳥たちに食べられるそう。「でも、別にそれは構わないわ。それも生態系の一部だから。人間のルールが第一ではないのよ。動物の視点でみればそこに食べるものがあれば食べるわね。わたしたちはそれも見越して作っている」
ナチュラルでいいエコシステムとは何か? アフリカ、ウガンダ、エチオピア、国連との仕事・・・。さまざまなプロジェクトが同時進行中で忙しいと笑うヴェイルさん。「でも全部好きなことだから」とあくまでも自然体の暮らしがとても素敵でした。


The Croft

The Croft

14765 NW Gillihan Rd.
Sauvie Island Portland, OR 97231
https://www.thecroftfarm.com

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