#04 オーガニックスピリッツのセット

スウェーデン ABCブック

製造元:SNÄLLERÖDS 
商品名:EKOLOGISKA SNAPSAR 

内容量:50ml × 5本 
価格:130 kr 

南スウェーデン、スコーネ地方の老舗蒸留所のスピリッツ5種セット。いずれもスウェーデンの伝統的な味わい。EUのオーガニック認定。 

「スウェーデンのおみやげ」4回目にして今さら告白しますが、自分が日本に帰る時、おみやげを何にするかは本当に難しくて、考えたあげく、いつものスーパーで普段食べている(おしゃれなやつではなくて普通の)チョコレートになったりします。それでいてこのコラムを書いているのだから、本当にだいじょうぶなの、と思われても仕方がないのですが、一方でスウェーデンに来た友人に「おみやげは何がいいかな」と聞かれると、割と話は早い。多分ですが、とっかかりの問題なんだと思います。スウェーデンを(短い滞在だとしても)体験した後であれば、ある種の物事が心に引っかかりやすくなる。たとえば滞在中、レストランに行ったそのことだけでも、目に入った「小さいコップで強そうなお酒を飲んでいたお客さん」を介して、選ぶおみやげに確かな手触りを与えることができる、そう思うのです。たとえ自身がそのものを味わっていなかったとしても。 

というわけで、今回のおみやげはお酒です。 

紹介するその前に、スウェーデンの酒屋事情を簡単に。ご存知の方もいるかもしれませんが、スウェーデン(そしてデンマークを除く北欧4カ国)は国がお酒の販売を独占しています。目的は、消費量をおさえ公衆衛生を保全するため。ちなみに非営利です。 

スウェーデンではSystembolaget(システムボラーゲット)と言います。 

その国営企業 Systembolaget曰く、こうした国営専売所以外でもお酒が流通する場合、消費量は30%増加するという調査結果があるのだとか。おかげで日本に帰ったとき、スーパーマーケットはともかく、コンビニや自販機でいつでもお酒が買えるのを見ると、びっくりするようになってしまいました。Systembolagetの閉店は19時、土曜日は15時までで日曜休日は閉店なので、休日前お店は結構混雑します(店内人数の制限をしている今のご時世だと、入店待ちの行列が長いこと長いこと)。 

国が大量に一括で仕入れるので、ビールやワインは比較的安価。 

話をおみやげに戻しましょう。今回取り上げるのはスウェーデンの伝統的なスピリッツが5種類、小瓶のセットになっているものです。こうしたスピリッツはスウェーデンのハレの日にかかせません。夏至祭、ザリガニパーティー、クリスマス、いつだってこれがなくては始まりません。 

セットは色々な味が楽しめるだけでなく、もうひとついい点があります。というのもスウェーデンが導入している酒税はアルコール度数に応じるので、ビールやワインは安価なのに比べ、ウィスキーやウォッカなどの強いお酒は極めて高い。ですので、ボトル一本を気軽におみやげとするのはちょっと勇気がいるのです。 

パッケージの中はこんな感じ。各50mlです。 

さて、作り手は南スウェーデン、スコーネ地方のSnälleröds(スネッレローズ)。120年以上の歴史をもち、オーガニックの材料をつかった蒸留所として有名です。ひとつずつ味を紹介していきましょう。 

  1. Brännmästarens Akvavit(ブレンメシュタレンス アクアヴィット) 

クミン、フェンネル、アニスの香りと、丸みを帯びたシェリーの香りのアクアビット。スウェーデンの伝統的な料理全般に合うとのこと。 

アクアヴィットはいくつかの基準※が設けられた蒸留酒のカテゴリーです。僕は5種類の中では一番好きです。アタックがとてもまろやかで、ハーブのさわやかな余韻が心地よいです。 

※アルコール度数が37.5%以上。クミンやディルによる味付け。他のスパイスも認められているが、あくまでも上記2つがドミナントでなくてはならない。 

  1. Bokhållens Akvavit(ボークホッレンス アクアヴィット) 

ドライ。フレッシュな柑橘系の香りとバニラの香り。ニシンのマリネ、熱々のスモークサーモン、牛肉やパテなどとの取り合わせがおすすめとのこと。 

のどごしがスッキリで、ある意味であぶない。5種類の中で唯一ロックでも楽しみたい味。 

試飲しながらの撮影で、おつまみとチェイサーが必要に。以前紹介したヴェステルボッテンチーズ。

  1. Mäskdrängens Akvavit(メスクドレンゲンス アクアヴィット) 

クラシックなアクアヴィット。クミンの上質な味わいが特徴。シーフードや伝統的なニシンのマリネ、よく熟成したチーズなどともよく合う、とのこと。 

スウェーデンのスピリッツはこれ、という味。クミンは効いていますが、一番素直な味わい。 

  1. Herr Berntsons Besk(ヘル ベーントソンス べスク) 

少しマイルドなタイプの伝統的なベスク。北欧のクリスマスなど、重めの料理によく合う、とのこと。 

べスクは伝統的なスピリッツの一種で、芋や穀物の蒸留酒にニガヨモギで味をつけたものを言います。いわばアブサンやチンザノのスピリッツ版。銘柄によっては顔をしかめるほど苦いものもありますが、これは程よい苦さ。味の濃いチーズにぴったりだと思います(あわてて持ってきたヴェステボッテンチーズが完璧)。 

  1. Jungfruns Brännvin(ユングフルーンス ブレンヴィーン) 

丸みを帯びたブレンヴィーン。バランスのとれた甘みがあり、クリーミーなニシンの煮込み料理やデザートチーズ、スパイシーな料理によく合う、とのこと。 

ブレンヴィーンというのはスウェーデンの穀物やジャガイモ由来の蒸留酒の総称です(アクアヴィットはその下位ジャンル)。ブレンヴィーンの特徴に甘みがあるのですが、これは蜂蜜のような余韻が。アタックのまろやかさでいうと①と近いのですが、余韻の優しさがより印象的。これもおいしいなあ。 

というわけで、今までで一番長い記事になってしまったのがお酒について、だということに気まずさを感じつつ、だいぶ酔いも回ったきたのでこの辺で。 

おまけ 

写真を撮りつつのデギュスタシオンテキストを書きながらの再デギュスタシオン。酔いました 

Take care. Noritake 

写真・文:アケチノリタケ
スウェーデン生活は、2007年の北極圏のキルナで、極夜のなか幕開け。月日は流れ、今はストックホルム郊外の群島地域で家族3人の生活です。クラフト、デザイン、ライフスタイルの分野を中心に、日本とスウェーデンの架け橋になるような活動をしています。互いの文化の同じ/違うところにふれながら、自分の輪郭がぼやけていくのを楽しむ日々です。
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