#08 スティグ・リンドベーリの回顧展

スウェーデン ABCブック

天気が悪い日が続いた週でした。降り止まない大量の雨のおかげで、庭に大きな池ができた家があちこちに出現。近くの砂浜はこれを書いている今も濁ったままです。そんな憂鬱な週でしたが、ひとつ僕にとって大きなイベントがありました。

それはストックホルムにある美術館ミレスゴーデン(Millengården)で開催される、スティグ・リンドベーリ(Stig Lindberg)の回顧展、そのオープニングパーティーです。 

スティグ・リンドベーリ(1913-1997)。ここの読者ならばご存知かもしれません。スウェーデンの製陶会社グスタフスベリの黄金期を支えたアートディレクターであり、僕を含め多くの人が「北欧デザイン」として想起するイメージを作り上げた偉大なるアーティストのひとりです。彼の多彩すぎる創作活動はどう肩書きをつけていいのか困るほど。陶磁器にはじまり、絵本やリトグラフなどのイラストレーション、彫刻、野外彫刻などのオブジェ、テレビなどの工業製品まで多岐にわたり、生涯で製作した作品は1万点を超えるとも。要するに、彼は当時の「人々の生活を作った人」なんだ、というのが僕の理解です。 

スティグ・リンドベーリ。この人がいなかったら僕はスウェーデンにいなかったはず。

場所はこちら。美術館ミレスゴーデン(Millesgården)はスウェーデンを代表する彫刻家カール・ミレス(Carl Milles 1875-1955)の私邸兼アトリエが元となっています。晴れていればストックホルムの水景色が望める素晴らしい場所。

こんな風にして美術館でイベントを開くことができて人々の笑顔がみられるのも本当に久しぶり。関係者がよばれるパーティーということで年配の方が多く、つまりそれはみんなワクチン済み、ということ。ワクチンが完全にウィルスを防いでくれるわけではないので、ハグなどはなくソーシャルディスタンスへの意識は残っているものの、それでもやはり会場にはほっとした空気が流れていました。

会場では人数制限がおこなわれ、ゆったりと見学ができたのですが、しかしそこはオープニングパーティ。作品を見ているよりも、久しぶりに再開した人たちと近況報告を交わすことのほうが忙しい。ましてや2020年からつづくパンデミック。僕らもスティグ・リンドベリの息子ラーシュさんはもちろん、リーサ・ラーションの息子さんたちや、陶磁器博物館の館長、いろいろお世話になった人たちと久しぶりに会え、展覧会鑑賞は二の次に。。。 

こちらがラーシュさん。いつあってもダンディーな洒落者。お隣は陶磁器博物館の館長ウルリカさん。 

とはいえカップ&ソーサー以外のスティグ・リンドベーリの作品をすこしだけ紹介しておきましょう。 

今回は習作のスケッチやリトグラフがおおく展示されていました。

1957年発表の大人気シリーズ「カーニバル」。32種類柄ありますが、展示作はその中でもレアなものばかり。

ストーンウェアのチェスピース。1970年代製作。チェスを始める前から欲しいのに、チェスを始めたものだから、もっと欲しい。

北スウェーデン、ウーメオ(Umeå)にある野外彫刻の習作。

シャモット製のオブジェ。無数の日用品の創作とバランスを取るかのように、遊び心、シュールレアリスム、寓話が散りばめられた作品もスティグの特徴の一つ。

1959年訪日。西武百貨店での展覧会に合わせてデザインされた包装紙の原画。五感のモチーフは西欧絵画の伝統、かつ百貨店という題材ゆえの衣食住モチーフを見事にアレンジ。

リンドベリ家のリビングを再現した展示。自作のアイテムをまずは自宅でコーディネイトして使ってみる、というのがリンドベリ家の日常。スティグの妻グンネルは優れたコーディネイターでした棚にはリーサ・ラーションのオブジェも見えますね 

というわけで、作品鑑賞は駆け足だったのでまた行かないと、と思いつつ会場を後にしたのでした。。。 

展覧会は2022年1月までのロングラン。世界の状況がよくなっていて、もしストックホルムに来ることがあれば、ぜひおすすめの展覧会です。 

Millesgården 
Herserudsvägen 32 

行き方 
ストックホルム中央駅から地下鉄赤ラインでRopsten下車ののち、バス(201, 202, 204, 206, 211, 212, 221のいずれか)でTorsviks torgで下車。そこから徒歩7分。 

おまけ

美術館のトイレの天井もリンドベリ「Prunus」柄。僕が初めて買ったリンドベリのカップ&ソーサーもこの柄でした。 

Take care. Noritake 

写真・文:アケチノリタケ
スウェーデン生活は、2007年の北極圏のキルナで、極夜のなか幕開け。月日は流れ、今はストックホルム郊外の群島地域で家族3人の生活です。クラフト、デザイン、ライフスタイルの分野を中心に、日本とスウェーデンの架け橋になるような活動をしています。互いの文化の同じ/違うところにふれながら、自分の輪郭がぼやけていくのを楽しむ日々です。
instagram
https://www.instagram.com/aurora.note/

RELATED ARTICLES

PICK UP