#11 ことしの夏至祭

スウェーデン ABCブック

スウェーデンに来た当初、僕が持っていたカメラは富士フィルムのデジカメで、はっきりとは覚えていないけれど、画素数が500万画素程度だったかな。コンパクトデジカメ、当時もそう呼ばれていたけれど、今とは違って、それは本当にコンパクトであることだけに意味があるような、ただぼんやりと記憶をつなぎとめるためだけにシャッターボタンを押すような、そんなカメラでした(今おもえば、の話)。 

一方で妻は、ほんのちょっとした趣味だった写真を、スウェーデンにきてからあらためて学校で学びなおすことに。学生でカメラにお金を注ぎ込めなかったところからスタートし、やがてシャッターを押すことが仕事となりました。自分が撮りたい画が明確になるのにあわせてカメラもかわり、そうして何万枚もの景色をきりとりながら、僕らの記憶の解像度はぐんぐんとあがっていきました。 

スウェーデン中部、ダーラナ地方レクサンドの夏至祭。祭のおこなわれる場所に向かうトラクター。荷台に子供たちを乗せ、民族音楽を奏でるバイオリン奏者たちに続いていきます。(Photo by Naoko)

スウェーデンにおいて、夏至祭はクリスマスと並ぶ大きな一年の節目となるイベント。親族が集まり、地域の人たちが協力して、祭りをおこないます。バイオリンの調べにあわせて、Midsommarstång(ミッドソンマルストング)と呼ばれるポールが立ち上げられます。(Photo by Naoko)

ミッドソンマルストングを立ち上げた後はその周りをみんなで踊り、祝います。多くの若い子や女性の頭には草花でできたかんむりMidsommarkrans ミッドソンマルクランス)が。真夏の草花には霊気がたくわえられていると信じられ、祭りの後も大事に保管し冬クリスマスの時に湯船に浮かべて健康を願う、という風習もあるそう。(Photo by Naoko) 

そうして今、僕が見ているのは、かつての夏至祭の風景。そう、先週は夏至でした。ですが去年同様パンデミックによって、たくさんの人が集まる夏至祭はほとんどが中止に。もしかしたら僕らが毎年のように訪れたこれら写真の村は、注意深く、ひそやかに、あの伝統を守っているかもしれない。けれど、ならばなおさら部外者の僕らはそれをひっそりと見守るべき。というわけで、これまでの写真を見ながら、記憶の中の夏至祭を祝った先週でした。 

おまけ

これが実際の夏至祭2021。ご近所さんとこじんまりBBQをしてのんびり。ハレの日にはスピリッツを飲むのが定番で、ほろよいでハンモックにつつまれて昔の夏至祭の写真をみたりして。

そうそう、庭にでてくるワイルドベリー、これも夏のしるし。まるでお菓子のような、嘘みたいに美味しそうな香りがします(お菓子の方が真似をしているわけですが)。

これを積んで。。。

メレンゲとレモンカードのデザートにトッピング。お隣さんの大好物。

夜の9時半の日差しはこんな感じ。ストックホルムの緯度でも夏至の日の日没は10時過ぎ。

Take care. Noritake 

写真・文:アケチノリタケ
スウェーデン生活は、2007年の北極圏のキルナで、極夜のなか幕開け。月日は流れ、今はストックホルム郊外の群島地域で家族3人の生活です。クラフト、デザイン、ライフスタイルの分野を中心に、日本とスウェーデンの架け橋になるような活動をしています。互いの文化の同じ/違うところにふれながら、自分の輪郭がぼやけていくのを楽しむ日々です。
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