知って得する「セルフメディケーション税制」使い方をFPが解説
日本医師会の調査によると「新型コロナの影響で医療機関の受診に不安を感じている」と答えた人は、全体の約7割にも上っています(※1)。中には、病院に行かず市販薬で対処したという人もいるのではないでしょうか。
そこで今日は、そんな人にこそ知ってほしい「セルフメディケーション税制」の仕組みをファイナンシャルプランナーが解説します。確定申告でこの制度を利用すると所得税や住民税を減らせる可能性がありますので、2020年に市販薬をたくさん購入した人は参考にしてみてください。
目次
セルフメディケーション税制は医療費控除の一種
「セルフメディケーション税制」とは、医療費控除の特例制度です。
「スイッチOTC医薬品(※)」を購入した費用の合計金額が年間で1万2,000円を超えた場合に確定申告でセルフメディケーション税制を利用すると、所得控除が8万8,000円まで受けられます。
※スイッチOTC医薬品……医療用から一般販売できるように切り替えられた(転用された)薬のこと
一方「医療費控除」とは、家族全員の市販薬代だけでなく病院を受診した費用や介護サービス費用なども控除の対象となる制度です。医療費控除を利用すると、これらの合計が年間で10万円を超える部分について上限200万円まで所得控除が受けられます。
つまり、セルフメディケーション税制や医療費控除を受けた人は所得税や住民税が安くなるということですね。
どんなときに使える?セルフメディケーション税制の適用条件は主に2つ
セルフメディケーション税制を利用できるのは、以下の条件に全て当てはまったときのみです。
・申請者が定期健康診断や予防接種といった一定の取り組みを行っている
・同一世帯で年間1万2,000円以上のスイッチOTC医薬品を購入している
「定期健康診断や予防接種といった一定の取り組み」とは、勤め先の健康診断や自治体のがん検診、インフルエンザの予防接種などを指します。
セルフメディケーション税制を利用するには、これらの証明書(結果表)または領収書が必要です。
要するに、たとえスイッチOTC医薬品の購入費が年間で1万2,000円を超えていても、定期健康診断や予防接種などの取り組みを行っていなければセルフメディケーション税制は利用できないということ。
どちらかだけの条件を満たしている状況では申請できませんので、くれぐれもご注意ください。
セルフメディケーション税制でカウントできるもの・できないもの
続いて、セルフメディケーション税制でカウントできるものとできないものをご紹介します。
カウントできるのは「共通識別マーク」がある商品のみ!漢方薬は対象外
セルフメディケーション税制でカウントできるのは「スイッチOTC医薬品」のみです。
購入した薬がスイッチOTC医薬品かどうかは、商品パッケージに「共通識別マーク」があるかどうかを確認すれば分かります。
こちらが、共通識別マークです。
商品のパッケージにこのマークがあればセルフメディケーション税制の対象となりますが、なければ対象外です。
加えて、残念ながら漢方薬も対象からは外れます。
確定申告でセルフメディケーション税制を使いたい人は、パッケージに「共通識別マーク」がある商品を選ぶよう意識してみてくださいね。
医療費や介護費用などは対象外。スイッチOTC医薬品以外の薬代も×
一方、セルフメディケーション税制でカウントされないのは以下の費用です。
・スイッチOTC以外の市販薬代
・病院の診察代、処方薬代
・介護費用、歯の矯正費用
ただ先ほどもお伝えしたように、医療費の合計金額が年間10万円を超えた場合、これらの費用は医療費控除の対象となります。
1年間の合計金額を出すまでは医療費控除の対象となるかどうかを判断できませんので、領収証やレシートは念のため最低でも12月末まではしっかり保管しておきましょう。
マスクや消毒薬は医療費控除もセルフメディケーション税制も対象外
感染症対策で、マスクや消毒薬への出費がかさんだ人は少なくないのではないでしょうか。
しかしこれらの費用は「治療」ではなく「予防」に当たるため、医療費控除もセルフメディケーション税制も対象外です。
マスクや消毒薬の購入費を間違って計算に含めないよう、注意してくださいね。
確定申告は事前の準備が大切。1年分の書類をしっかり保管しておこう
今日は、セルフメディケーション税制の仕組みをファイナンシャルプランナーが解説しました。
実際のところ、セルフメディケーション税制や医療費控除の対象になるかどうかは家族全員分の医療費や市販薬代を計算してみるまで分かりません。そこでオススメなのが、医療費や市販薬代の領収書を全て保管しておいて翌年の1月にまとめて確認する方法です。
制度の条件に該当すれば3月の確定申告で控除を受けられますので、余裕を持って1月中に計算を済ませておくとよいでしょう。
なおセルフメディケーション税制と医療費控除のどちらを利用するかは、年ごとに変えてもOKです。家庭の医療費や市販薬代の金額に合わせて、よりお得な制度を選んでみてくださいね。
執筆:久慈 桃子(2級FP技能士)
編集:永瀬 なみ
【参考元】
(※1)「第7回日本の医療に関する意識調査」について|日本医師会
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