『体も心も温まるフィンランドの豆スープ ヘルネケイット』

北欧のおやつとごはん

スウェーデンでは木曜日に豆スープを飲む習慣が中世より続いています。かつてスウェーデンの支配下にあった、隣国フィンランドでも同じく木曜日に豆スープを飲む習慣が生まれました。ポタージュよりも濃い、煮詰まったようなテクスチャのスープは、飲むというよりも“食べる”の方がふさわしいかな。スウェーデンではアートソッパ (Ärtsoppa)、フィンランドではヘルネケイット(Hernekeitto)と呼びます。

豆スープは学校給食や社食、軍隊などの木曜日のランチとして供されるほか、レストランで出されることもあります。

フィンランドなど北欧では昼食をビュッフェ形式にしているレストランが多く、見て選べるし、いろいろな料理を少しずつ食べられるので旅行者には嬉しいシステム。2009年にフィンランドで行ったレストランで、ビュッフェの一品に豆スープがあり、「今日は木曜日だから」と。これがフィンランドの豆スープ初体験。

そして、こちらは毎年フィンランドに行くたびにほぼ立ち寄っているレストランの豆スープ。ある日いつものように訪れると数品並ぶビュッフェのはずが豆スープ1種類のみ。驚く私に店主が「今日は木曜日だからね」。そうか、そうだった。

これだけでお腹いっぱいになるのですが、それだけでは口寂しいのか、パンケーキと食べるのが昔からの習慣。この日はマルディグラ間近だったのでパンケーキでなくラスキアイスプッラ(右上の生クリームを挟んだ丸パン)が付いてきました。

ところで、スウェーデンでは黄色エンドウ豆なのに対してフィンランドは緑のエンドウ豆。フィンランドでは黄色いエンドウ豆が生らないからと聞いたことがありますが、真偽のほどは確認していないので分かりません。緑のエンドウ豆は、つまりグリーンピースです。黄色のエンドウ豆は手に入れるのが難しいですが、グリーンピースなら日本でも容易に手に入るじゃないですか。

通常は(フィンランドでもスウェーデンでも)乾燥豆を使って作るのですが、どこでも売っている冷凍グリーンピースで作ってみました。やってみると、豆を戻す時間(一晩)はないし、あらかじめ煮る時間(1、2時間くらい)はないし、なんと半日くらいの短縮に!

それでは作ってみましょう。

【ヘルネケイット】

分量 2名分

<材料>
・冷凍グリーンピース 250g
・スモークベーコン 100g スモークハムでも良い
・玉ねぎ 中½個
・水 400cc
・ベイリーフ 1枚
・マジョラム 小さじ1 オレガノでも良い

<作り方>
1.玉ねぎは粗みじん切り、ベーコンは小さ目に切る。


2.鍋にマジョラム以外の材料を入れ、強火で沸騰させたら火を弱め、蓋をして1時間コトコトと煮る。時々確認して水が減りすぎていたら足す。

3.1時間経ったらマッシャーなどで豆と肉を潰す(粒が残る程度)。マジョラムを加え、味をみて足りなかったら塩を加える。


4.器に盛り、お好みの量のマスタードを加える。

<ヒント>
マスタードは、あればフィンランドの甘いマスタードを使ってください。なければディジョンマスタードでもいいです。でもフィンランドのマスタードは最近日本にも進出して買えるようになったので、これを機会に手に入れてもいいかも。

豆の甘みが美味しく、出汁を入れなくてもベーコンからのうま味で充分。どろりと濃厚なので、他におかずがなくてもお腹に溜まる一品です。

フィンランド人は豆スープには、もう飽き飽きしているという話も聞きます。でも、スーパーに行けば豆スープの缶詰はずらりと並んでいるし、前述の通りレストランでもいまだに定番で、フィンランドの暮らしには切っても切れないメニュー。年配のフィンランド人が「子供も大人も寒い雪の日にたっぷり外で遊んで戻って来たら豆スープで温まるんだ。それでみんなでプーッとやるんだよ」と楽しそうに、そして懐かしそうに話してくれたことがありました。

豆スープはフィンランド人にとっては体だけでなく、思い出につながった心も温かくする食べ物なのかな。

ところで、豆スープはパンケーキと食べるのが習慣と書きました。スウェーデンではいわゆるフライパンで焼いた丸いパンケーキですが、フィンランドではオーブンで焼く四角いパンケーキ、パンヌカックが添えられます。パンヌカックのレシピはそのうちアップします。



三田陽子
北欧ビンテージの買い付けのため年に数回訪れる北欧各国で個性的な北欧料理にはまったのがきっかけになり始めた北欧レシピサイト『北欧のおやつとごはん』。材料は日本で手に入るものを使い、分量も日本サイズに調整して家庭で気軽に作れるように工夫されたレシピが人気。なかなか日本では食べられない北欧の味をお試しください。

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