#03 ヴァカンスで春スキー
第15週、ちょっと遅れた春のヴァカンスをとって、春スキーに行ってきました。場所はスウェーデンの真ん中よりちょっと上、イェムトランド県(Jämtland)、ノルウェー国境にほど近いヴェストラ・ハーリエダーレン(Västra Härjedalen)のラムンドベーリィエット(Ramundberget)というスキー場。ストックホルムから車で7時間ですので、朝5時に出発し、ランチなど休憩を挟んで、14時に到着、という距離感。そうそう、スウェーデンでの距離感はちょっと異なっていて、僕としても300kmぐらいの運転であれば、それほど苦になりませんが、さすがに7時間は長い。車内で聴くプレイリストを作っておけばよかった。
※ メルカトル図法なので、スウェーデンの真ん中より下に見えますが、だいぶ上の方です。
「ラムンズベーリエットに行ってきた」というと、大概の人がわかるところを見ると、スキーリゾートとして有名なようです。歴史は結構古く1930年代にさかのぼります。この地方の観光協会のコテージに泊まっていた数名の学生が、ここでの滞在を気に入り、翌年も来ることに。その際、近くの農家が彼らを受け入れたのが始まり。この家主ブリッタ&アガトン・ノールベーリィさんと学生はその後も連絡を取り続け、翌年は若者たちが所属していた山岳クラブの若者たちも滞在することになり、徐々にベッドが増えていったというわけです。
近隣集落を記す絵。1930年当時は、ここにある集落を結ぶ舗装道などなかった時代です。
初日は猛吹雪で斜面が見えず、この歳で本格的にスキーを始めた僕なんかは怖くて仕方なかったのですが、後半は晴天に恵まれました。晴れ渡った青空と雪景色。日本のスキー場と違い、山岳の景色といっても切り立った山がないので、リフトであがってしまうとなだらかな雪原がただただ広がる世界です。
山の上はクロスカントリー。
くだればスラローム(アルペン)。
休憩を取るならふもとより山頂で。ただただ美しい。
丘の上のレストラン。多くの人は外の席で。時節柄のソーシャルディスタンス、というより、何よりも単に春の日差しを求めて。気温は大体10度ぐらいですが、日差しは強烈です。
きちんとスキーを始めたのは去年からという僕。連日スキー三昧で結構上達した(はず)と思うのですが、一緒にスキーを始めた息子もまた驚くべき学習速度。今回の滞在ではスキー教室に通いました。最初はぐずったものの、無事卒業。この教室で感心したのは、教えるのがテクニックにとどまらないところ。レッスンには森の妖精の話が出てきたり、エネルギーをもらえるという古い樹がでてきたり。整備されたゲレンデだけでなく林にも入っていきます。退屈な技術レッスンも興味をひく話を取り混ぜることで子供たちを飽きさせないようにする、そういう狙いも確かにあると思います。けれどおそらくそれだけじゃない。よくよく考えればスキーとは移動手段の一種であり、冬の自然の中に入っていくための生活手段です。いわゆるスポーツとして滑走技術に面白みを見出すのはどちらかといえば後からのはず。スキーを操り、自然の中に入っていく、その先で子供たちが何を感じ、何を得るのか。このレッスンではそんなことを伝えてくれたような気がします。ありがとう、ノーラ先生。
最終日、卒業証書と干しぶどうが入った小箱をもらいました。
さて、ラムンドベーリィエットの今年のウィンターシーズンはこの週でおしまい。雪が姿をけし、トレッキングやマウンテンバイクでのヒルクライムなどのツーリストがやってくるまで、一時のお休みです。
最後に食べ物の話でも。滞在中は一軒家を貸し切っていたので基本は自炊です。ローカルフードが多くのこるイェムトランド。スキー場から数キロ先に地元の食材屋(正確にはRökeriet、肉や魚を燻製加工する店)を発見。店内には現地のベリーで作ったジャム、イワナの燻製、トナカイや雷鳥も。
右下に見えるのが雷鳥。左下はキジ。北部でしか採れないクラウドベリー(Hjortron)も。
全て地元の食材。こういうのが一番のご馳走。
イェムトランドの食文化の秘密はまた後日に。
それではまた。
Take care, Noritake
おまけ。みちをうろうろするトナカイには頻繁にであうので、注意。
写真・文:アケチノリタケ
スウェーデン生活は、2007年の北極圏のキルナで、極夜のなか幕開け。月日は流れ、今はストックホルム郊外の群島地域で家族3人の生活です。クラフト、デザイン、ライフスタイルの分野を中心に、日本とスウェーデンの架け橋になるような活動をしています。互いの文化の同じ/違うところにふれながら、自分の輪郭がぼやけていくのを楽しむ日々です。
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