『ママ、男の子も総理大臣になれるの?』

北欧 フィンランドからの手紙

フィンランド人の友人のある日の投稿に、こんなものがありました。

「フィンランド内閣によるコロナ感染症についての特別会見番組を観ていた5歳の息子が言った。”ママ!大きくなったらなりたいものが見つかった!総理大臣!”」

「その後、彼は少し考えて、”…でも男の子も総理大臣になれるのかな?TVの中にいるのはみんな女の子だけど…。女の子たちだけで全部決めているのかな?”

私たちは、新しい時代に生きている」

昨年12月、世界最年少でフィンランド内閣の首相となったサンナ・マリン氏が就任して、ちょうど1年が経ちました。

SDP(フィンランド社会民主党)所属で、元運輸・通信省大臣のマリン氏は当時34歳。アンッティ・リンネ元首相の郵便局ストをめぐるスキャンダルが引き金となった辞任によって首相に抜擢され、女性かつ世界最年少という「異例」な総理大臣として世界中にニュースが流れました。

さらに、「政治家=エリート」という固定観念を崩すマリン首相の生い立ちにも注目が集まりました。アルコール依存症の父親と別離したシングルマザーの母親の元、貧困家庭で育ったこと。高校を卒業したのは、一族で彼女が初めてであったこと。母親には同性のパートナーがいて、二人の元で育ったというレインボーファミリー出身であったこと。政治家になる前はレジ打ちのバイトなどをしていたこと。

フィンランドの現政権は5党連立政権ですが、その党首が全て女性(※正確には社会民主党の党首はマリン首相ではなく、今年の夏までリンネ元首相が続行、その後マリン首相に委任)であることも世界中から大きな反応を受けました。発足当時は19人のうち12人が女性で、また35歳以下の閣僚が4人含まれていることも注目されました。

現在の副首相はカトリ・クルムニ氏からアンニカ・サーリッコ副首相に変わりましたが、5党連立政権のトップは全て女性で、発足時からコロナ対策など大変な時期に国民を牽引して来ました。

5歳になる友人の息子さんは、政治で女性が活躍するのが「当たり前」の社会で、むしろ「男性も首相になれるのか?」という疑問を抱いたようです。高齢化、男性偏重が顕著な日本の政治とは全く正反対の事態になっていることは、興味深くもあり、またこれからの未来について今一度よく考え、社会の構成員である私たち一人一人が慎重に進めていく必要があることを痛感させられます。

「全ての子どもが何にでもなれ、全ての人間が威厳をもって生きていける社会を作りたい」と就任直後にツイートし、多くの国民から根強い支持を受けているマリン首相ですが、ファッション誌に素肌にスーツを着た写真が掲載されたことで賛否両論の論争が巻き起こったり、コロナ感染症の拡大による社会の不安定な状況などから由来する右派支持者の急増で、これからの続投の可能性に注目が集まっています。

そういえば。奇しくも先週、私の元に、地方自治体の選挙に参加できる参政権を得たというお知らせが来たのです。

選挙権も被選挙権もセットです。外国人であろうと、一定期間居住していたら自分の住む土地の政治に関わる権利を付与されるというのは非常に嬉しいことです。

人種差別、ジェンダー格差、高い失業率、DV件数の多さなど、まだまだ課題が多いフィンランド。さらに多様性に富み、社会の構成員である一人一人の声が中央に届きやすい社会にできるよう、これからも積極的に政治を身近に考えていきたいです。




写真・文 : 吉田 みのり

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