日常でできる簡単な気分転換①花を飾る

北欧 フィンランドからの手紙

花屋さん、行ってますか。

街を歩いている時、花屋を見かけると瞬時に顔がぱぁっと明るくなり、心がふわりと軽くなるのはわたしだけじゃないはず。いてくれるだけで嬉しい、そんな存在が花屋さん。ありがとうの気持ちで店に立ち寄り、可愛いと思ったものを購入して、ウキウキと家路を急ぐあの喜びったら。

気分がなんとなく晴れない時に効果的なのは花を部屋じゅうに飾ること。なんなら一か所でも良いし、一本でも良いけれど。花があるだけで、そこにあるたくさんの生命がこちらに笑いかけてくれているように見えるし、自分のために花を飾るという行為を通して、自分が自分のことを大切にしていると実感できる気がする。

というのも最近ひょんなことから、自分のこと本当に大切にしなければなぁと気づいたのです。自分の猫を愛するように、自分のパートナーを大切にするように、自分の友達やお客さんを気遣うように、自分にも同じだけのケアを注いであげているだろうか。とふと気がついて。他人のことばかりを優先して、自分のことをおろそかにすることは、実のところ、自分のことだけ考えて、他人のことはどうでも良い扱いをすることと、袂を分かつことなのではないか。そんなパラドックスに気が付いて、もっと積極的に自分を大切にするように努めることを決意したけれど、実はすごく難しい。鏡を見ると冴えない自分に落ち込む。失敗をするとやっぱりダメなのだと自分を叱責する。常に批判的な自分が顔をのぞかせるのだ。いつからこうなってしまったのだろう。そんな時こそ、花を迎える。自分のために。自分をいたわる、そんな目的がこの行為には含まれているのだ。

行きつけの花屋さんは友達が営んでいるポップでキッチュな花屋さん「BUD」や、ルーネベリ通りにある老舗「Runebergin Kukka」など。季節によって面々が変わるのを眺めるだけでも本当に楽しい。そういえばむかーし、東京のバイト先で年上の友達が花屋さんになることを目指していて、ある花屋さんで修業を始めたことをぼんやりと覚えている。花屋さんになるには、朝早く起きて、寒い市場でシャープに仕入れをすること。花は鮮度が命だから、花にかかわる仕事は寒い場所が多い。それから冷たい水を扱うから、手はいつも赤くてカサカサ。華やかに見えて実は大変な作業だから志半ばであきらめる人も多い。そんなことを彼女は教えてくれた。芯の強い彼女は、そのあとちゃんと花屋さんになって、長野に戻って立派に独立した。だからわたしは花屋さんを心から尊敬している。

花を飾るには、買うほかに育てるという手もある。これも心喜ぶ作業。冬は成果がでないことも多いが、夏は天国。夫の母は内気で友達がほとんどいないけれど、春から夏にかけては庭にこもってなん十種類もの花を育てる。ある夏、数えてみたら70種類近くあった。夏には彼女の才覚が文字通り一気に花咲く。育てる喜び。待つ喜び。愛でる喜び。それも自分のことを大事にする作業のひとつ。

文 : 吉田 みのり

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