『1万年前から現在までのフィンランドの歴史を駆け足で学べる「フィンランド国立博物館」へ』
秋のある日、フィンランド国立博物館(Suomen kansallismuseo)を訪れました。ヘルシンキ中央駅から徒歩10分ほどの場所にあるこの博物館では、1万年前から現在までのフィンランドの歴史を駆け足で学ぶことができます。
玄関ホールの天井を彩るフレスコ画はアクセリ・ガッレン=カッレラが民族叙事詩「カレワラ」を主題に描いたという有名な作品。以前Museokortti(ミュージアムカード)を購入したので、入場料は無料でした。このカードを使うと、1年のあいだにフィンランド国内にある300以上もの美術館や博物館に何度でも無料で入場できます。
博物館の常設展示は6つのエリアに分かれており、先史時代から近代までのフィンランドの生活様式や装飾品などを様々な史料から学ぶことができます。
氷河期が終わったばかりのフィンランドから、紀元前までの歴史をざっと見る展示。動物の皮や骨、布などの物品は長い年月のあいだにボロボロになって消失してしまいましたが、銅や鉄などで作った刀や装飾、槍などの兵器はいまだにその形を残しています。
当時は死者を埋葬する際、「次の人生でも使えるように」と、宝石や兵器など、故人が所有していたものを一緒に埋める慣習があったそうです。そのため、墓などの遺跡から大量の宝石などがのちに見つかり、こうして現代の私たちに当時の思想や習慣伝え続けてくれています。
中世時代の台所用品。
キリスト教が伝わってからの美術品。フィンランドにキリスト教が伝わったのは13世紀の終わり頃とされていますが、西方教会と東方教会の両方から同時並行で伝搬されたため、両方からの影響を受けながら独自に発達していったというユニークな歴史があります。面白い一説として、「マーリア」という神の母という存在が民間で知れ渡った時、伝承として「リンゴンベリー(コケモモ)によって神を身ごもった」という一説があるそうです。リンゴンベリーが出てくるあたりが、まさに北欧らしくてかわいいなと思ってしまいました。
フィンランドがはじめて世界地図に登場したのは1539年のこと。「世界の最果て」としての存在感でした。
後半はスウェーデンとロシアからの独立、貧困、戦争、ナショナリズムの興りなど、この100~150年あまりの出来事をつぶさに学ぶことができます。現在のフィンランドがフィンランドとなるまでのバックグラウンドや、人々の思想の根底にある何かを知りたい人には知的好奇心を掻き立てられる楽しい博物館です。
美しい景色がのぞめるこの建物は、エリエル・サーリネン、ヘルマン・ゲセリウス、アルマス・リンドグレンの3人の有名建築家によって設計され、1910年に完成したもので、中世の石造教会を思わせる外観が美しく、周囲を散歩するだけでも心躍ります。
文 : 吉田 みのり
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