寒い冬にゆっくり家で過ごす大切な時間

北欧 フィンランドからの手紙

人が家で過ごす時間をうつした映画が大好き。フィンランドを代表する映画監督といえばアキ・カウリスマキだけど、彼の映画の中に登場する労働者階級のヘルシンキの主人公たちが住むシンプルな住居がうつるたびに、胸がきゅっと痛くなり、その清貧な様子に魅力を感じずにはいられない。

スウェーデン映画の巨匠、ロイ・アンダーソンの『愛おしき隣人』でもスウェーデンの一般的な家の中がよく出てくる。整頓された美しさや目に優しい色使いを見つめてウットリしながら観る。

映画の中で、人が家にいるシーンも好き。朝ごはんを食べているところ。掃除したり、料理したりするところ。家の中のインテリアを見るのも楽しい。ちょっとした道具や色使いから、その国の習慣や考え方までもが分かったりする。登場人物の日常生活を垣間見ると、なんだか平凡な自分の生活も少し愛せるような気がする。

日本をはじめ、ヨーロッパの南やアメリカ大陸に住む人々からはよく「フィンランドは寒いでしょう」と訊かれるけれど、確かに外の気温は低いけれど、建物のなかはいつもビックリするくらい暖かい。

セントラルヒーティングシステムがあるから、たとえ外がマイナス20度でも、家の中ではTシャツで過ごせることもあるほど。サウナもあるし、どの家にも床にはふかふかのカーペットが敷いてあり、ソファにはふかふかのブランケットがある。キャンドルに火を灯して、窓際には星型のランプや小さなライトで明かりを添えて、みんなで暖かく過ごすのが冬の決まり。

冬はただでさえ外は暗くてストレスが溜まりやすいので、家の中では平和でいたいと皆が思っている。のんびりゆっくり家で過ごす時間、大事。安全なスペースで気を抜いてゆっくりと過ごし、静かで穏やかな時間を持つと、普段心をモヤモヤとさせているあんなことやこんなことが次第にふわりと軽さを持ち始めてくる。そして、心は元気を取り戻し、人生は輝きを取り戻す。

文 : 吉田 みのり

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