番外編 (5) 南イタリア・マイオーリからの手紙
ナポリから39㎞離れた、アマルフィ海岸沿いで最も広いビーチがあるマイオーリ。カラフルな石ころがいっぱい。石灰岩の絶壁に囲まれた街は、度重なる洪水によっていくつもの家が破壊され、1950年代にビーチリゾートとして再建されたそう。真冬だけど昼間はとても暖かく、Tシャツで歩けるくらい。マイナス20℃が当たり前のフィンランドからやって来た私たちははしゃいで、薄着になって海のそばを歩いた。
砂浜で石ころを眺めていたら、いつもの石とちょっと違う。ギリシャのコルフ島の砂浜では白くて丸い石に心惹かれてたくさん拾って持って帰ってきたし、ラオスの小舟でしか行けない小さな島、ムアンゴイでは平べったくて独特の優しい色合いの小石を川で見つけてやっぱりたくさん持って帰ってきたけど、ここの石は様々な模様がついていてびっくりするほど個性的。夫婦で黙々と石を集める時間が過ぎた。
9世紀から12世紀にかけて存在したアマルフィ王国は先駆的な海洋都市国家だったものの、ノルマン人侵略後没落し、街の殆どを破壊されたそう。これらの石は当時の建物の一部だったのかも?それとも近郊の陶器ので有名な町から流れてきた練習用の陶器のかけら?かつての壁画が海に捨てられて、時間の経過とともに石になったのかと思うと、胸が熱くなる。やっぱり歴史はロマンだ。
ところで突然のマイオーリの美味しいもの情報。
漁業も農業も盛んなアマルフィ。この旅ではここに来るまでに毎日のように新鮮な魚介類を味わい、アマルフィ名物のパスタ「シャラティエッリ(scialatielli)」も食べていたのでこの日の前菜はサラミの盛り合わせに。近くの山で伝統的に作られたサラミはご馳走。そのままがやっぱり一番美味しい。真ん中の瓶に入っているのはアーティチョーク。酸味が口直しになって肉と合う。こういう計算を何千年も前からしてきた先祖様はすごい。
マイオーリの隣にあるミノーリという小さな町が発祥の「ドゥンデリ(Nnunderi)」は、ニョッキのような手打ちのパスタ。ニョッキはじゃがいもを使うけれど、このパスタはニョッキの代わりにリコッタチーズを使う。手に入るもので代用して生まれる料理の奥深さ。
この日のワインももちろん、歩いて行ける程度に近い山で作られた地元のワイン。地産地消が一番美味しい。次の目的地は、いよいよこの旅のクライマックスである隣町の「Minori」、私と同じ名前を持つ村です。
文 : 吉田 みのり
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