『信頼関係で成り立つヘルシンキの無料公衆サウナ『ソンパサウナ』』

北欧 フィンランドからの手紙

ヘルシンキでよりディープな体験ができる場所の一つが「Sompasauna(ソンパサウナ)」です。数あるサウナの中でも異色の存在感を放つこのサウナは、民間の人々や団体がボランティアで運営している公共サウナとして、地元の人々に愛されています。朝から晩まで24時間いつでも無料で入れて、自分たちで薪を割ったり火を起こしたりする自由と自治の場です。

SompasaunaはもともとはKalasatama(カラサタマ=和訳すると「漁港」)の南側にあるSompasaari(ソンパサーリ)という場所にありました。2000年初頭から始まったKalasatamaの都市開発プランの影響でサウナの撤去を余儀なくされ、しばらく民間とヘルシンキ市との抗争が続いていましたが、最近ついにVerkosaari(ベルコサーリ)に場所を移動し、設備などをさらにパワーアップさせて再オープンを果たしました。

この日は近くで行われていたインディーズレコード会社「Helmi Levyt」のライブの帰りに、友達の提案でSompasaunaに泳ぎに行きました。当時ヘルシンキは記録的猛暑日の連続で、毎晩暑くて眠れない日々が続いていたのです。着いたら数十人、もしくは100人以上が裸で海で泳いだり、サウナに入ったり、サウナの横で休息したり、ハンモックに揺られたりして、さながら深夜の楽園のようでした。

私は最近は水着を持ち歩いていて、この日も午後にはヘルシンキの別のビーチで泳いだりしていたのでそのまま水着で泳いだけど、友達はじめ多くの人は裸になって泳いでいました。若者が大勢で裸になってサウナに入り、裸で海に飛び込み、トラブルもなく楽しめる、ここは小さなユートピアです。

このサウナは本当に不思議な空間で、遊びに来るたびにどんどん新しい友達ができちゃいます。裸だからみんな自然にガードを外してるのかもしれないですし、みんなで作り上げる場だからこそ、雰囲気がとても良いのかもしれません。私が最初に来たのは2014年ですが、その時に出会った人で今も続いてる友達もいます。2018年にここで出会った人と結婚した人も友達にいます。

熱帯夜で汗をかいた後、帰り道にふと寄って飛び込んだヘルシンキの海の波は神秘的な光を帯びていました。黒、紺、桃色、水色、クリーム色…。波に浮かんで、まだ明るい空を見上げて、「首都なのにこうやって徒歩で泳ぎに来れる海とサウナがあるって良いよね」 なんて友達と話しながら、いつまでもぷかぷかと揺れていました。

写真・文 : 吉田 みのり

RELATED ARTICLES

PICK UP