鈍い色が覆う、冷たく厳しい自然の中でも消えることのない人間の炎。フィンランド写真美術館で開催中のSusanna Majuri回顧展。
フィンランド写真美術館はヘルシンキに2つあります。一つはKaapelitehdas(ケーブルファクトリー)に、もう一つは中心地のKämp Galleriaというショッピングモールの地下に。今までにケーブルファクトリーの方の美術館には何度も行ったことがありましたが、今回は初めて、Kämp Galleriaの方へ行きました。お目当てはフィンランド人の写真家で昨年急逝したSusanna Majuri (1978–2020)の写真展「LOVE」です。
Kämp GalleriaへとAleksanterinkatu通りを歩いていると、もうクリスマスムード一色!なんとも嬉しい気持ちになります。
回顧展ではSusanna Majuriの主に2002年から2012年にかけての作品を鑑賞ことができます。若い頃から文学、音楽、そして写真に傾倒していたという彼女の作品には、彼女が好きだった文学や音楽の要素が大きく反映されています。現実を写しながらも浮かび上がる別の現実世界、おとぎ話のような情景が、フィンランドの庭や沼という一見何もないところから彼女の手によって浮かび上がります。
Susanna Majuriは特に水、鮮やかな色、北欧の自然、そしてシナリオを演じる人間のモデルに強い魅力を感じていたそうで、特に水は大きなテーマの一つとして繰り返しその形や色がとらえられていました。
トゥルク大学で写真を学び、2010年頃には権威ある賞を次々と受賞し、若いころから活躍していたSusanna Majuriは2020年の春に突然帰らぬ人となってしてしまいました。彼女の作品を「ドラマチック」「おとぎ話」として批評する視点が主流のようですが、私が強くひきつけられたのは「寒さ」「冷たさ」の中にある強い生命の鼓動でした。
どの作品もいつも寒そうで、光をとらえる写真でも冬の寒い日に突然射してくるはかない光を感じます。海の中や霧の中での人間は厳しい自然の中に冷たい身体を委ねてあまり心地よい様子はありません。ある作品の解説にあった彼女の言葉がすべてを物語っているように思えました。
「私はある一人の人間の火が、たとえその人の周りが灰色で冷たくても決して消えることがないということを表現したかったのです。自分自身にそれを表現するために勇気を出したかったのです」
寒くて、冷たくて、暗くて…そんな中でも生きる命があります。燃える思いがあります。むしろそれは鈍い色が覆う、厳しい自然の中に置くことでよりコントラストを持ち、美しく見えるのかもしれません。彼女の表現しようとしていたこと、自分には1%もつかみ取ることはできませんが、それでも希望や気づきをもらえたエキシビションでした。本当に行って良かったと思える展示でした。
ちなみにKämp Galleriaの最上階ではとっても可愛いクリスマスマーケットが開催されていたので是非覗いてみてはいかがでしょうか。可愛い雑貨がたくさん!プレゼントにも良いものがきっと見つかるはずです。
文 : 吉田 みのり
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