サウナの秘密ー地球上で人間が自発的に行く最も熱い場所がもたらす健康の効能とは

北欧 フィンランドからの手紙

つい先日、フィンランド国営放送YLEのオンライン記事で「サウナがもたらす健康への効能」について書かれていました。

これまでは世界で一番暑い場所はカリフォルニアのモハーヴェ砂漠の北部にある、56.7℃を記録したこともあるデスヴァレーだと言われてきました。しかしフィンランドのサウナは60℃を超えますが、それでもたいていの人は気持ちよさを感じようと熱い石に水を投げて(ロウリュ)、サウナ室内の温度をさらに上げようとします。サウナは地球上で、人間が自発的に行く最も気温の高い場所であると言えるでしょう。

東フィンランド大学でサウナを研究した内科および心血管疾患の専門家であるヤリ・A・ラウッカネン教授によれば、サウナに定期的に入ることで健康に大きな効果が期待できます。ラウッカネン教授のチームは、定期的なサウナ入浴と、血圧障害、冠状動脈性心臓病、脳卒中、心臓関連の突然死のリスクの低下との関連を観察した2015年の研究結果をもとに、次なる調査として、被験者100人にサウナに入ってもらい、サウナで過ごした時間が身体にどのように影響するかを測定しました。最も重要な観察は、血圧の低下と血管の弛緩と拡張に関するものでした。

研究チームは、20人のサウナ参加者のグループと、サウナを使用しない20人のグループを追跡し、それぞれの機能を測定しました。調査はサウナに入ることが長期的に血圧を下げることができることを示唆し、人間は熱にさらされると全身がリラックスし、血管が拡張し、動脈の血流への抵抗が減少するという発見をしました。

フィンランド人にとっては、サウナによって心も身体もリラックスし、爽やかな気持ちになれるということを研究が始まる前から何世紀にもわたって言い伝え、伝統として受け継いできましたが、後の調査でサウナの喜びはそこに放出されたエンドルフィンから来ることが分かっています。なんと、人間はサウナに入るたびに、非人間的な熱に対処するために自身の脳によって生成される自然のモルヒネを分泌しているのです。「心も身体もスッキリ」の原因はこのエンドルフィンにあるそうです。また、定期的にサウナを利用している人の間では認知症のリスクが低いことも知られています。研究の結果、サウナは、心と脳の機能に対する他の有益な効果に加えて、記憶障害を予防する可能性があると考えられています。週に4〜7回のサウナを利用した男性は、週に1回汗を流した男性よりも認知症の診断のリスクが66%低くなったという研究報告もあります。

フィンランド人は何千年もの間、暗い部屋に座って汗を流してきましたが、その理由がようやく明るみに出てきました。理解できませんでした。身体を清潔に保つため。リラクゼーションのため。心と身体を癒すため。サウナの魔法は一言で語りつくすことはできませんが、温泉を愛する日本人と同様、サウナを愛するフィンランドの国民性も、奥が深く魅力的です。

文 : 吉田 みのり

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