『コロナ禍で一時解雇になったシェフたちと始めた、小さな料理コンペ①』

北欧 フィンランドからの手紙

ヘルシンキをはじめ、フィンランドの多くの地域で2回目のレストランの通常営業停止命令が出たのは今年の3月はじめのこと。シェフやソムリエ、バーテンダーなど一時解雇(lomautettu)された人がほとんどで、せっかくの機会だからゆっくり休んだりできるねーなんて言いつつ、みんなすぐに飽きてしまい、家でとことん凝った料理を作りたがるシェフが周りにはごろごろ。

そんなシェフの友達と4人でそれぞれ想い想いのタルタルステーキを作る選手権をひょんなことから開催した。肉は統一して同じ鹿肉。

こちらは味付けされる直前のタルタル用の肉。みんな平等に同じ色、同じ量です。

できあがったタルタルたち。

こちらは私。ユッケからインスパイアされたタルタルステーキ。上に乗っているのはお酢と塩と砂糖で少しだけ浅漬けにした梨です。卵黄を使っているのはわたしだけでびっくり!

こちらは夫のベンヤミン作。たっぷりのパルミジャーノ・レッジャーノの下にはアンチョビやケイパーなど強い味つけで調味されたイタリア風のタルタル。

友達のアッフェは、スモークさせた大根や森のきのこのピクルスや松ぼっくりの赤ちゃんのピクルスなど森の香りたっぷりのニューノルディックスタイルのタルタル。

友達のカトリは、パイナップルやマスタードシード、松の実など甘くて小さなものがたくさんの、可愛いタルタル。

同じ肉を使っても、みんな全然違うスタイルなのがとっても面白かった。お互いのタルタルを食べながら「この酸味が松の実とマッチして〜」とか分析して、料理に合うワインを選んだり、知識や趣味や意見を交換する料理オタク(?)ならではの会。

タルタル大会のあとは友達が腕によりをかけて作った料理が次々と出てきた。これはチーズたっぷり、カリフラワーのオーブン焼き。

そしてチキン丸焼きも!中にはパンやガーリックの詰め物が入ってて、チキンの肉汁をたっぷりと吸った美味しいなにかになっていた。ブラッドオレンジとベビージェムのサラダと食べると、まさに古き良き正統派フレンチレストランの味。

デザートは、ポピーシードレモンケーキ!中にはブラッドオレンジとブラッドオレンジジャム!!上にはマスカルポーネチーズクリーム!!!

人生いちばんと言えるくらい美味しかった!!

この夜飲んだものは、フランスのカベルネ・フラン、ジョージアのオレンジワイン、サンセールのセバスチャン・リフォーによるビオワイン、フランスのグレナッシュ・グリのオレンジワイン、ベルギーのランビック・グーススタイルのビール、ブルガリアのワイン、ベルギーのクリーケンスタイルのビール、プラムをアクアヴィットに漬けた友達お手製の梅酒。飲みながらそれぞれのワインやビールの知識や思い出を話すのがとても楽しい。

チーズも出てきて、宴はつづく。

次はパスタ対決をしよう!と約束した。

一時解雇になってしまい職を失っても、料理の腕を磨いたり、ワインやビールとの組み合わせや味の文化を模索し続ける姿勢は崩さない。そんな友達の明るく真摯な態度を見て、たくさんのインスピレーションをもらった。本当に良い友達に囲まれて恵まれているな、私。



写真・文 : 吉田 みのり

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