#03_P Prinsesstårta(プリンセスケーキ)
Prinsesstårta
プリンセストータ(プリンセスケーキ)
名詞
スウェーデンを代表するケーキ。スポンジ、ラズベリージャム、生クリーム、バニラクリームの層が緑色のマジパンで包まれ、同じくマジパンのピンクのバラがあしらわれている。誕生日パーティーはもちろん日常的なフィーカでも人気。
カフェを併設したパティスリーをスウェーデンではコンディトリー(Konditori)という。ストックホルムだけで1500以上あるといわれている。ドイツやオーストリア、そして北欧諸国において同じような名前で存在するが、スウェーデンのコンディトリーにしかないケーキがいくつかある。その一つ、そして最もポピュラーなのが<プリンセストータ(Prinsesstårta)>だ。噂によれば、スウェーデンの全コンディトリーの、全商品において、プリンセストータは70%の売り上げをしめるというからおどろきだ。個数になおすと年間に約50万個にのぼる。
プリンセストータを作る①
すこし歴史をひもといておこう。この緑色のケーキの誕生は1900年代初頭にさかのぼる。レシピの考案者はイェニー・オーケルストローム(Jenny Åkerström)。当時、イェニーはストックホルムで若い女性のための家庭科学校を運営しており、彼女の生徒には、デンマークの王女姉妹、マルガレータ王女、メルタ王女、アストリッド王女がいた。1931年イェニーはレシピブックを作成するのだが、その際にデンマークの王家に許可をもらい、この本を「Prinsessornas Kokbok(プリンセスたちの料理本)」と名付けることにした。
プリンセストータを作る②:ピンクのマジパンでバラをつくる
この本の中で初めて紹介された緑色のケーキは当初、その見た目のとおり<グリーンケーキ>と紹介されていたのだが、王女たちのお気に入りだったことから、後にプリンセストータと呼ばれるようになったという(増刷された後の版ではプリンセストータに改称されている)。
プリンセストータを作る③:独自アレンジのレシピをもとに
このオリジナルのレシピと現在のレシピには若干の違いがある。その中でも特に、今でも論争の火種になっているのはラズベリージャムの有無だ。ホールケーキをカットしたときに見せる、色鮮やかなラズベリージャムの赤いラインが存在しない/しなかったなんて考えがたいが、この先の話はある程度複雑(かつトリビアル)なので、読み飛ばしてもらってもかまわないです。
プリンセストータを作る④:ピンクのバラをあしらう
ある説によれば、プリンセストータの歴史のある一時期、ピンクのマジパンで包まれたバージョンがうまれ、それを<オペラトータ>とよんだ。その特徴は外見に合わせてラズベリージャムが入っていたことだった。今現在もこのピンクバージョンはあるものの、ラズベリージャムだけが本家プリンセストータにも導入されたらしい(分断と統合の歴史だ)。他方傍流で黄色マジパンのバージョンもあり、これは<カール・グスタフ・ケーキ>という。バナナとチョコレートが特徴だが、これは若干マイナーな位置付けで、当然バナナはどこにも転用されていない。さらに青や白のもあり、これらはなんと<プリンストータ>という。男女平等だ。大きさこそ違え形的にも、コンビニエンスストアのレジ横に並ぶ中華まんのシリーズを思い浮かべなくもない。
プリンセストータを作る⑤:粉砂糖(Florsocker)のお化粧はかならず
ちなみにセムラもそうだが、プリンセストータでつかわれている生クリームもまた、砂糖ははいっておらず、最初は面食らう人も多いと思う。しかし、スウェーデン人の友人曰く「日本で食べたケーキの生クリームが甘くて気持ち悪かった」「シンプルに素材の味を生かすのが得意な日本なのに、どうしてこうなるのか」ともらすのだから、習慣というのは面白い。かくいう僕も今では甘くない生クリームのほうがしっくりくるようになりました(ラズベリージャムがあればだが)。
プリンセストータを作る⑥:庭の草花をあしらって
プリンセストータを作る⑦:ラズベリージャムの赤いラインが美しい
ちなみに僕は凍らせて食べるのがすきです。
ではでは、この辺で。
Take care, Noritake
写真・文:アケチノリタケ
スウェーデン生活は、2007年の北極圏のキルナで、極夜のなか幕開け。月日は流れ、今はストックホルム郊外の群島地域で家族3人の生活です。クラフト、デザイン、ライフスタイルの分野を中心に、日本とスウェーデンの架け橋になるような活動をしています。互いの文化の同じ/違うところにふれながら、自分の輪郭がぼやけていくのを楽しむ日々です。
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