#05 白樺の樹液からできた飲みもの

スウェーデン ABCブック

製造元:SAVHUSET 
商品名:Sav Sparkling 他 

内容量:750 ml 
価格:197 kr 

スウェーデン北部、イェムトランド地方の白樺の樹液から作られた世界でもめずらしいスパークリングワイン。Savhuset(サーヴヒューセット)社のピーター・モステン氏が1785年からのオリジナルレシピにもとづいて醸造した商品。100%オーガニック。 

前回に引き続き今回のおみやげもお酒です。ウィスキーやワインは重くて持ち運びに神経をつかうので、おみやげにはちょっと、と考えるかたも少なくないはず。ですが今回の商品の特異さを知れば、ちょっと無理してもいいかも、と思ってもらえるのかなと期待を込めて。 

今回紹介するのはSavhuset(サーヴヒューセット)という作り手による「白樺の樹液からできたドリンク」です。皆さんは白樺の樹液が飲めることをご存知でしょうか。スウェーデン語では白樺の樹液をBjörksav(ビョルクサーヴ)といいます。ビョルクサーヴの採取・利用はスウェーデンでは18世紀から19世紀にかけて一般的になった古い習慣(フィンランド、他にもバルト三国から東欧諸国にかけてもみられます)で、冬から春にかけての貴重なビタミン補給源であり、単なるのどの渇きを癒すものとしての利用のほかに、薬としても重宝されました(カルシウム、カリウム、マグネシウム、マンガンなどのほか、糖質、アミノ酸やタンパク質も含まれています)。 

今回のおみやげに話をもどしましょう。ビョルクサーヴは変質がはやく、採取後数日でだめになってしまうそうなので、それ自体を持ち帰ることはできません。そこでおすすめなのが、Savhusetのドリンクです。スパークリングワイン、スピリッツ、グロッグ(スウェーデンのホットワイン)を製造しており、世界で初めてビョルクサーヴによるスパークリングワインを製造販売した作り手として世界的にも有名です。 

こちらは2012年ヴィンテージのスパークリングワイン。白樺の樹液、ハチミツ、若いバナナ、柑橘類の皮、マカデミアナッツを思わせる、ほのかに香ばしい繊細な味わい。 

はじまりは環境工学の専門家ペーテル・モーステン(Peter Mosten。Savhuetの創始者でありプロダクトの責任者)が、化学工学の研究者だったグンナー・イェグレリウス(Gunnar Jegrelius 1921-1981)の膨大な研究アーカイブを整理している際に発見した「Björkchampange(白樺シャンパン)」という1785年のレシピにさかのぼります。その後10年以上の実験を経て世にでたのが「Sav Sparkling」。 

執筆時点で購入可能なのは ヴィンテージ版Sav Sparkling 2012(330 kr)と通常盤のSav Sparkling(197 kr)の2種類。実にスッキリしていて柑橘系の味わいの中に、香ばしいというかパンのような(発酵飲料なのであたりまえですが)ニュアンスがあり、なんとなく素朴で親しみがわく味わいです。 

そのほかにもおすすめしたいのが、同社の蒸留酒のSav Snaps。 

500 ml272 kr。アルコール度は38%。とにかくスムース。長くのびる蜂蜜の余韻が特徴です。 

香りの印象はジュニパーベリーとベルガモット。口に含むとまろやかな広がりにレモンの酸味、そして長く続く蜂蜜のような甘く深い余韻が続きます。ああ、おいしい。 

もう一つ、グロッグについて。実は今回はこれを機に初めて購入してみました。 

500 ml ボトル。97kr。アルコール度は14。オレンジとジンジャー、クローブなどの香辛料がきわだつ 

グロッグはスウェーデンのホットワイン。クリスマスシーズンの定番ドリンクで、毎年11月ごろになるとさまざまなメーカーのさまざまなブレンドのグロッグが店頭に並びます。Savhusetのグロッグは定番のグロッグスパイス(シナモン、クローブ、オレンジピール、ジンジャー)の中でも、ジンジャーとカルダモンがきわだっている印象。もはや僕の味覚ではビョルクサーヴのニュアンスは見つけることができませんでしたが、これはこれでおいしい。暖かくするのもいいけど、ロックで食前酒として飲むのもいいかもしれません。 

さて、どれが一番おすすめかというと、長く楽しめるという意味で、僕はSnaps(蒸留酒)でしょうか。今回紹介の商品がシステムボラーゲット(前回も出てきましたお酒の専売所です)全店でオンリストされているわけではないので、事前にウェブサイトで確認されることをおすすめいたします(https://www.systembolaget.se)。検索ワードは「Sav」で。 

ではでは、今回はこのへんで。 

おまけ

作り手は違いますが、Ekobryggeriet(エコブリュッゲリーエット)のトニックウォーターもおすすめです。2017年創業のオーガニック・プレミアム・トニックウォーターの作り手で、ラインナップにビョルクサーヴがあります(ほかにもクラウドベリーやモミの木の新芽!なんかも)。 

Take care. Noritake 

写真・文:アケチノリタケ
スウェーデン生活は、2007年の北極圏のキルナで、極夜のなか幕開け。月日は流れ、今はストックホルム郊外の群島地域で家族3人の生活です。クラフト、デザイン、ライフスタイルの分野を中心に、日本とスウェーデンの架け橋になるような活動をしています。互いの文化の同じ/違うところにふれながら、自分の輪郭がぼやけていくのを楽しむ日々です。
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