#01『リサ・ラーソンのライオン』

スウェーデン ABCブック

Lejon Mini(ライオン ミニ) 
デザイン:Lisa Larson(リーサ・ラーション) 
製作:Keramikstudion(シェラミークストゥーディオン) 
寸法:高さ6 cm 
価格:488 kr 

リーサ・ラーションによる愛らしいライオン。材質はシャモット(耐火性の陶土を高温で焼いてから細かく砕いて粉状にしたもの)。ハンドペイントによる彩色のため、ひとつずつ異なる味わいをもつ。このミニサイズのほか、中、大、特大がある。初出は1970年。 

「スウェーデンのおみやげ」第一回目なので、少々おなじみの品かもしれないけれど、これを取りあげました。日本でも大人気、リーサ・ラーション(※)のライオンです。 

日本でも購入可能ですし、もう持っているよ、という方も多いかもしれません。でも、スウェーデンにきたら、せっかくですのでグスタフスベリまで足を伸ばしてみてはどうでしょう。ファクトリーショップで、ライオンの表情を見比べながら、自分だけのお気に入りが見つかるかもしれません。 

工場内の見学はできませんが、ファクトリーショップでは実際に絵付け作業もみることができますよ。 

と言いつつも、実はこのチョイス、もう作品自体というよりも、作り手への個人的な思い入れによるものが大です。 

僕が初めてリーサにお会いしたのは、もう10年ぐらい前。取材の機会があり、ご自宅にお邪魔させてもらいました。自宅アトリエでの製作がメインのリーサ。たくさんのスケッチやプロトタイプ、一点もの作品に目を奪われたのはもちろん、世界各地のさまざまなオブジェや作品、本棚に並ぶ蔵書をとても興味深く拝見しました。何より「生活の場」と「創作の場」が境目なく地つづきになっているのが、彼女の作品を理解する上で、とても重要な気がしたのを覚えています。とにかく自然なんです。楽しみながら創作する姿が。 

その後、お家には幾度となく訪れましたが、いつでも変わらないのは彼女の優しさ、キュートさ、そして衰えることのない創造への意欲、そして、日本のモノづくりへの愛情。1970年、彼女は初めて日本を訪れています。民藝運動の浜田庄司を訪ねるのが目的の一つでしたが、言ってみればその時はまだ、リーサと日本、お互いの想いは彼女からの一方通行でした。それが数十年の後に、まさかこのようなことになるとは彼女も想像もしていなかったはずです。 

お買い得なB品コーナー(のテーブルの下に何かいる!)もあります。

そうそう、写真のライオンは、前工場長フランコさんから頂いたもの。彼はリーサと共にシェラミークストゥーディオン共同設立者の1人。 

右のパネルの一番左がフランコさん。左のパネルの右下にはリーサも(隣はアストリッド・リンドグレーン。製作中だった長靴下のピッピのフィギュアを見せています)。1980年代後半、リーサの作品を製造していた製陶会社グスタフスベリの経営が悪化。彼女の作品を含むアート部門が閉鎖になるときに、リーサとフランコさんをふくむ有志がその部門を買取り、独立させたのがシェラミークストゥーディオンです。つまり彼らがいなければ、このライオンをはじめ、今あるリーサの作品は(過去に生産されたヴィンテージ品以外は)市場からなくなってしまっていたというわけです。 

70年代に作られたヴィンテージ品も確かにいい。時間だけが作りだす味わいがあります。けれども、今も変わらず、職人さんたちの力によって作り続けられるリーサの作品もまた、同じように彼女のあの笑顔とチャーミングさを僕らに伝えてくれています。 

※日本ではリサ・ラーソンで表記されるのが一般的ですが、スウェーデン語の正確な発音はリーサ・ラーション。ここでは敬愛の意を込めてリーサと呼ばせてもらっています。 

シェラミークストゥーディオンへの行き方 
ストックホルム中央駅から地下鉄でスルッセン(Slussen)へ。スルッセンのバスターミナルから474番(Hemmesta行き)のバスに乗り、ヴァッテンユーレット(Vattenhjulet)で下車。そこから徒歩1分です。

グスタフスベリはこんなところ。港があり、かつてはここから製品を船で出荷していました。 



写真・文:アケチノリタケ
スウェーデン生活は、2007年の北極圏のキルナで、極夜のなか幕開け。月日は流れ、今はストックホルム郊外の群島地域で家族3人の生活です。クラフト、デザイン、ライフスタイルの分野を中心に、日本とスウェーデンの架け橋になるような活動をしています。互いの文化の同じ/違うところにふれながら、自分の輪郭がぼやけていくのを楽しむ日々です。
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