#22『ナイフとのし棒、という名のレストラン』

スウェーデン ABCブック

スウェーデンの9月は新しい学年がはじまる時。僕の息子は小学生に、そして(唐突ですが)僕自身も大学生に。なにかと慌ただしい今日この頃ですが、そんな中でぽっかりと空いた、夫婦だけの時間ができまして、慌ててレストランを予約。お気に入りのその場所は Kniv och Kavel(クニーヴ・オック・カーヴェル)。僕らに与えられた時間はわずか50分。そして(これもまた唐突ですが)身重でそれほど量をたべられない彼女ということもあって、前菜、メイン、デザートの一人前をシェア。知っている店でないとできない不躾なオーダーですが、でも楽しみ方は人それぞれ、とも思ったり。まあ、メインはオーナーの顔を見に、です。 

Kniv och Kavelは住宅地を歩いていると突然現れます。実はこれってスウェーデンでは結構不思議な光景で、これまではレストランを含め住宅地でお酒を提供する場所をオープンするのは住民の反対が大きかったのだそう。それがだんだん寛容に、というよりもむしろ、自分の住んでいる地域に美味しい食事ができるところがあることを望む人が増えてきて、これはその結果なのだとか。 

まさに住宅地の一角。商業地と住宅地は分けられているのが普通なので、表通り以外でこうしたお店を見ることはほとんどありません。うちの近くにもこうした場所があったらいいのになあ。 

時節柄、席数を限定しているので、常に満席。僕らは急遽予約をしたのでバーカウンターでお食事。 

鴨のテリーヌ。イタリアンパセリとコルニッションならぬガーキンスのピクルスとの相性がすてき。鮮やかなガーネット色はすもものコンポート。ローズマリーがアクセントになっていて、これまたおいしい。 

メインの準備をするオーナーシェフのマグヌスさん。写真に映る紙袋はテイクアウト用で、ひっきりなしにオーダーが入っていました。 

メイン(パスタだけど)は手打ちのビゴリ。ケールのソースにブラータのせ。めちゃくちゃおいしい。 

デザートはベリーのセミフレッド。全体的に今回はイタリア色が強めですが、同じくオーナーでマグヌスさんのパートナー、アンナさんはパリのパン屋さんで長年働いていたこともあって、パリのビストロのように地元の人がリラックスして食事ができる場所にしたい、というのがこのレストランのコンセプト。店名のKniv och Kavelはナイフとのし棒、という意味。ナイフは料理担当のマグヌスさんを、のし棒はパン担当のアンナさん、それぞれを表しているのです。 

そんなわけで、50分とはいえ、十分に食事を楽しみ「Je ne veux pas travailler 〜♪」と口ずさみつつ、レストランを後にしました(大学生に戻ったわけだしね)。 

今回はこの辺で。 

Kniv och Kavel 
Vapengatan 2 
126 52 Hägersten 
https://www.knivochkavel.se 

Take care. Noritake

写真・文:アケチノリタケ
スウェーデン生活は、2007年の北極圏のキルナで、極夜のなか幕開け。月日は流れ、今はストックホルム郊外の群島地域で家族3人の生活です。クラフト、デザイン、ライフスタイルの分野を中心に、日本とスウェーデンの架け橋になるような活動をしています。互いの文化の同じ/違うところにふれながら、自分の輪郭がぼやけていくのを楽しむ日々です。
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