『人生を自由にデザインする』
先日、仕事終わりの夕方に友達と近所を散歩してきました。
私がフィンランドに移住してからずっと、仲良くしてくれている友達のノンナ。
出会った頃は歯科助手をしていたノンナですが、仕事を通して、自分が本当に就きたい職業は歯科助手ではなく歯科医の仕事だと気づき、歯科医を志すため医大の入学試験を受けることを決意。今は平日は大学準備学校で学び、週末は歯科助手のアルバイトをしています。
フィンランドでは、こうしたキャリアチェンジをする人に非常に多く出会います。国家戦略として「生涯学習(Lifelong Learning)」をテーマに掲げ、国民が自由に新たな資格取得する手厚いサポートを行っているフィンランドでは、自由なタイミングで、自由に学べるという環境が整っているといわれています。
日本ではごく一般的な「高校を卒業してすぐに大学に行き、大学か大学院を卒業したらそのまま就職をする」というコースは、フィンランドではたくさんある生き方やキャリアパスの一つでしかありません。
例えばノンナは現在30歳ですが、高校卒業後はカフェでバイトをしたりバンドをしたりして、数年後に歯科助手の学校へ進学しました。私の周りでは他にも、大学に行く前に数年間世界を旅する人、大学を休学してパティシエの学校に入り、そこをまず卒業してから大学に戻って学問を再開する人、20代は複数の専門学校に行きながらITの仕事をしたり起業をし、40歳になって全く違う科目を学ぶために大学に入り直す人など、様々な人がいます。
2019年度のOECD加盟国の大学入学平均年齢は、日本は18.3歳、一方フィンランドは23.5歳。大学院修士課程の入学平均年齢は、日本は21.9歳、一方フィンランドは30.9歳(参考情報:https://stats.oecd.org)。この数字を見ても、フィンランドのキャリア形成支援の特徴に掲げられている「柔軟性を強調する生き方」がよく分かると思います。
数字だけではなく、実際に生活してみると、誰かの進路や転職、離職のタイミングやライフ・プランニングに関して、友人または家族が干渉したり、ネガティブなコメントをするという状況に遭遇することもほとんどありません。
フィンランドに移り住む前に、在日フィンランド大使館が主催のイベントに出向きましたが、「人生は自分でデザインするものだという意識が国民一人一人にある」とお話しされていた大使館職員の方の言葉が今も忘れられません。
年齢や固定観念にこだわらず、やりたいことをする。誰のためでもなく、自分のために生きる。当たり前のことですが、それが難しい社会もある。
そんな中で、フィンランドの人々の考え方と、その根幹を支える社会制度の在り方から学べる要素はたくさんあるように思えます。
写真・文 : 吉田 みのり
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