『夜更けのちっぽけな誓い』

北欧 フィンランドからの手紙

フルタイムの仕事の他に、いろいろな仕事を常に4〜5件抱えているので、普段とても忙しい。忙しいおかげで過去の傷や過ちや後悔について深く考える機会がなく、反省する間も無くまた日々は慌ただしくすぎていくけれど、心のひだにひっかかったままの違和感や疑問、焦燥に触れないままやり過ごしていくのは、自分の中にある大事な部分を無視しているようで口惜しい。

でもこの時期はぼけっとくらい考え事をしていたらたちまち季節性鬱病に悩まされてしまう。ただでさえそこはかとなく暗く寒い日々(例えば明日はマイナス17度)に、過去にしでかしてしまった間違いや、今となっては自分でも理解不可能な自分勝手な行動、向こう見ずな行動、誰かを傷つけてしまった言葉や行動、伝えきれなかった愛、将来への漠然とした不安、そういうことを考えると救いようもないようなどん底まで息をつく間もない速さで滑落してしまう。

過去に情けない日々があったわけだけど、それを引きずらないように生きていくのは大事なことだと思う。私すでにあの頃の自分と同じ自分ではないのだから。月日が経過していくことで、人は誰でも知らない間に変わっていく。過去の自分で、どうしてもいけ好かない自分を置いてきてしまっても良いのだ。毎日、変化し続けていることは否めないのだから。過去の、もう自分ではない自分に、あえて自分を引き寄せようとしなくても良い。

孤独ほどつらいものはない、と時々思って泣く。孤独に陥っている時は、前を向くことさえ難しく感じる。生きていれば、つらいこと・思い通りにならないこと・憤ることが度々起こるけれど。何よりも大事なことを忘れてはならない。誰かが心から、人生をかけて私を大切にしようとしていること。安心を与えようとしていること。それはひとときの時間でもある。私のために美味しい料理を作ってくれた人がいる。私のために言葉を認めた言葉を書いてくれた人がいる。私のために時間を作って会いにきてくれた人がいる。夜中にふと目が覚めて、全身が涙に覆われるほど不安と悲しみでいっぱいになった時に、立ち返るのは、誰かの愛だ。自分の愛だ。何もなくても、愛だけはある。

自分には、愛がある。それだけで良い。

この愛から初めて、自分のこれからの未来を展開していきたい。そんな小さな誓いを立てて、ようやく前に心が向かい、私はまた眠り落ちる。そういう夜を、なんどもなんども越えて、そのうちおばあちゃんになるんだろうなぁ。強くて優しいおばあちゃんを目指すぞ。



写真・文 : 吉田 みのり

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