『波佐見焼とフィンランドのデザインが融合した子ども向けのテーブルウェア、NUPPU(ヌップ)』
フィンランドのデザイナーやアーティストの作品を展示するギャラリースペースでもあり、またエコロジカルでノスタルジックな雑貨などを販売する『Lokal』については以前にも記事に書いたが、今回は『Lokal』で2月末まで開催されていた、波佐見焼とフィンランドのデザインが融合した子ども向けのテーブルウェア、NUPPU(ヌップ)のジュニアシリーズの展示会を訪れたのでそのことについて。
たった一度しかない子ども時代に寄り添う、サステイナブルなテーブルウェアを。フィンランド・ヘルシンキを拠点に活動するマイヤ・プオスカリがデザインした「NUPPU(ヌップ)」は、丸みのある優しい手触りと温かみのある口触りを持ち、安心の天然(セラミック)素材でつくりあげられました。フィンランド語でつぼみを意味する「NUPPU」は、2児の母でもあるマイヤが、自身の育児体験もとにデザインしたプロダクトです。 子どもが人生でいちばん最初に触れる器こそ、長く、ずっと使えるものを。そんなつくり手の想いをつめこみ、製造には波佐見焼の伝統と技術を活かし、一つひとつ丁寧に焼き上げました。
(NUPPUのHPより)
デザイナーのマイヤ・プオスカリさんが在廊していたので、直接説明してもらう機会に恵まれた。
「子ども用の食器というと、プラスチック素材だったり、大人になったら使わないような柄や絵が描いてあったりして、長く使うイメージがあまりないと思います。大人になってもずっと使い続ける食器を贈ることで、そのお皿の一生は長くなり、結果的にサステイナブルな選択をすることになると思っています。子どもって、実はちゃんとした陶器のお皿を使えばあまり割ることはないんです。私の2番目の子どもは現在3歳になるんですが、今までに一度しかお皿を破ったことがありません。むしろ夫の方がコップなどを割っていると思います。もし割ったとしても、商品には3年間の保証がついているので、交換することができるんですよ。使い捨てではなく、一生付き合うような陶器を使うことで、子どもたちは物の大切さを学ぶことができると思います」
すでにベイビーシリーズが先駆けて発売されており、陶器、スタイ、スプーンがセットになって、バラ(ピンク)、オクラ(イエロー)、スプラウト(グリーン)、石(グレー)、空(ブルー)、雪(ホワイト)など、フィンランドに身近にある自然の色からインスピレーションを受けた色で展開されている。日本でももちろん購入可。
今回は3歳から6歳までの子どもを対象としたデザインのジュニアシリーズの展示会だった。
「ジュニアシリーズのナプキンは吸収性と通気性に優れたワッフル織りで、リネンを追加したので速乾性や手触りも良いのです。今治(愛媛県)で作られました。学校でも使用することを考えて、フックに名前が記入できるようにしています。ブルーベリーやリンゴンベリー、クラウドベリーなどのフィンランドのベリーからインスピレーションを受けた色の展開になっています。大人になっても使えるよう、また大人が使ってもいいような、落ち着いた色合いで、かつ子どもも喜ぶ色味を考えました。」とマイヤさん。
余談だが、私はよくギャラリーに立ち寄る。そのきっかけは、15年ほど前、パリで学んでいた時、大学で美術の研究をしていた後輩(といっても年下なだけで特に私が何かお世話したわけでもないのだけれど。今も大切な友達)が、「ギャラリーに行くことをオススメします」とアドバイスをくれたことから。
当時、美術館や映画館に行くのは好きだったけれど小さな画廊やギャラリー、アートスペースは敷居が高いと考えていた私。美術館や映画館はお金を払えば入場できるし、匿名の存在として鑑賞できるけれど、小さなギャラリーなどはドアを開けた瞬間から注目されたり、声をかけられたりするし、作品を買うわけでもないのに作品を見に来たりして悪いなぁなんて申し訳ない気持ちがして避けていた。でも友人は「パリのオススメのギャラリーのリスト作るんで、気が向いたら行ってみてくださいよ。画廊の人たち、喜びますよ。作者が在廊しているかもしれないし。買わなくても良いんです。できるだけ多くの人の目に届くようにと願って展示してるんですから」と熱心に説得するので折れてしまい、ある日の午後、彼女が作ってくれたリストにあるギャラリーの中で、マレ地区にあるところを片っぱしから回ってみた。
それ以来、スウェーデン、ギリシャ、ドイツ、チェコ、もちろんヘルシンキ。どの街に行っても、面白そうだな、と思ったらギャラリーの扉を開けるようにしている。そこには、美術館とは違う様式で、その街の「今」が、アートやデザインの形で私たちを待っている。その街に住むアーティストやキュレーター、ギャラリストやディーラーなどの考え方やアティチュード、熱量などを肌で感じられる場でもあるのだ。インターネットや本で読んだりするより、実際に携わる人に会って話したみた方がインパクトは断然大きい。作品の勢いも、実際のものを目で見ると質感や形など、全然違う印象を受けるものだ。その街を知りたければ、ギャラリーにもどんどん行こう。そこには、新しい発見や、今までの常識をちょっと覆すような作品や考え方や試みがたくさん待っているに違いない。
写真・文 : 吉田 みのり
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