#26 夏の終わりの日
「それでもまだ、僕は認めたわけではないですよ。夏は終わっていないんだ(いつ終わるのか、についてはまた後日)」
と、僕が書いたのは8月17日の「さよなら、青い空」と題されたエントリー。夏の青くて高い空は、あの後思い出したように、何度か姿を見せてはくれたものの、それでもやっぱり背中を押してくれるような力強さはなくて。乾いた土や黄色い葉の香りが一晩ごとに、うっすらと地面に積もっていくのを、毎朝、靴ひもをむすびながら感じていました。
そしてやってきた決定的な「夏の終わり」。それがいつか、の答えは先週の金曜日、Torrsättning(トルセットニング:ボートの陸揚げ)の日。
Torrsättningは朝の8時から、陸の駐艇場の順番に進められていきます。僕は「10時近くになるだろう」といわれていましたが、せっかくの地域の人と触れ合える機会ですし、最初から参加。たいした仕事はないですが、クレーン車が寄せる桟橋で次の順番を待つボートの着岸を手伝ったりして。ボートとボートの持ち主をたくさんみていると、それぞれに意外性や類似性(飼い犬とにている飼い主みたいな)が見えることがあっておもしろい。
僕の隣人でヨットの先生のボートも無事完了。
今年の夏に初めてヨットを手に入れた僕にとっては今回が初めてのTorrsättningで、まつわるさまざまな手順がとても新鮮でした。中でも、この日までにヨットのマストをはずさなくてはいけないのですが、それがまた大変な作業で。火の見やぐらみたいなところに登って、マストの先端と手動クレーンのフックを繋ぎ、釣り上げながら外す、という、文字にすればなんでもないんですが、かなりの高所での作業(そのため写真を撮るどころではありませんでした)。あれを毎シーズン、マストの脱着で2回やるのかとおもうと。。。
陸揚げしたら終わり、というわけではなくて、船底の汚れは陸揚げ直後の濡れている時を逃したら大変になる(特にフジツボ)ので、すぐに作業を開始。
面白いのは、本当にみんな「ああ、夏が終わったね。今年の海はどうだった?」なんて話をそこかしこでしているということ。全く関係ない気もするけれど、僕の母親の実家は、元旦に下着一式や歯ブラシなんかを新調する、ということを習慣にしていて、あの区切りをつけることの「潔さ」や「清さ」みたいなのに似ているな、と思ったり(新しい下着とピカピカにしたボートを一緒にするな、といわれそうだけど)。
そうこうするうちにランチタイム。大定番のソウルフードKorv med bröd(コルヴ・メッド・ブロード:ホットドッグ)がふるまわれます。10時ごろと言われていた僕の番ですが、結局回ってきたのは13時半ごろ。「僕の夏」を締めくくる儀式は日暮れまで続きました。
今回はこの辺で。
Take care. Noritake
写真・文:アケチノリタケ
スウェーデン生活は、2007年の北極圏のキルナで、極夜のなか幕開け。月日は流れ、今はストックホルム郊外の群島地域で家族3人の生活です。クラフト、デザイン、ライフスタイルの分野を中心に、日本とスウェーデンの架け橋になるような活動をしています。互いの文化の同じ/違うところにふれながら、自分の輪郭がぼやけていくのを楽しむ日々です。
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