#17 さよなら、青い空

スウェーデン ABCブック

僕はまだ認めたわけではないですよ。去年の日記を読んでみたら、僕はまだまだ海で泳いでいたし、フォトライブラリーにはまだまだ抜けるような青空があった。あの夏は本当に素晴らしかった。「短い」はスウェーデンの夏の枕詞だけど、それに反して2020年の夏は8月末まで続く長く密度の濃い夏だったんです。あれが例外だということは知っていたけど、それでもやっぱり先週のある朝、コーヒーを飲みながらiPhoneの天気アプリをひらくと、ずらり、と最高気温が20度以下の日がならんでいるのをみたとき、恐れていたことがついに、そんな気がしたわけです。 

8月生まれの息子のたっての希望でストックホルムの遊園地に行ったのですが、それがトビラの写真。昨今の状況につき人数のコントロールが目的の総予約制ということで、当日の天気予報をみながら無闇に日程を変更できない、ときていまして、ビンゴ、しっかり雨にぬれました。これまた息子のたっての希望で買ったわた飴が湿気と霧雨でみるみる液状化したりして。 

ヨットの作業もこのありさま。一日中雨ということはあまりないけれども、もつかな/もたないかな、という空模様をにらみながらハーバーにいき、降ってきた後も、すぐ止むかな/止まないかな、と耐えている間にずぶ濡れに。こうした雨のひとつひとつが水温を下げ、気温を下げ、樹々の葉を黄色にし、空気の香りを夏ではない何か(言うまい)にしていくのです。 

つい先々週までこうだったのに。

まあ、こういう雲はもう何か(言うまい)の到来を暗示しているわけですが。 

どうでしょう、僕の記憶では、日本の場合こういう入道雲こそが夏のイメージで、蒸し暑さとか、蝉の鳴き声とか、夕暮れの雷とか、夕立ち後の澄んだ空気とか、そういうものをひっくるめて「夏」という気がするんだけどな。「夏」と「雨」は切りはなせない。一方でスウェーデンでは、これまた僕のイメージですが、雲ひとつない、というのが「夏」かもしれない。 

これを書きながら改めて直近の天気予報を見てみたら、今週の最高気温は17度とのこと。シャワーがわりの水浴びはまだできそうだけど、海水浴と言うわけにはもういかないかな。 

それでもまだ、僕はまだ認めたわけではないですよ。夏は終わっていないんだ(いつ終わるのか、についてはまた後日)。 

今回はこの辺で。 

おまけ

うちの近所にあらわれた移動式ボートピザ屋さん。常設ではなくFacebookでドコドコにあらわれますよ、の告知をしているのですが、味のおかげか物めずらしさのおかげか、はたまたこの日の空模様がよかったからなのか、僕らが行ったときにはすでに完売。右手に写っているのは釜焼き用の薪とのことで、なんでも古くなった桟橋の材木を利用しているのだとか。群島地域ならではですね。 

Take care. Noritake 

写真・文:アケチノリタケ
スウェーデン生活は、2007年の北極圏のキルナで、極夜のなか幕開け。月日は流れ、今はストックホルム郊外の群島地域で家族3人の生活です。クラフト、デザイン、ライフスタイルの分野を中心に、日本とスウェーデンの架け橋になるような活動をしています。互いの文化の同じ/違うところにふれながら、自分の輪郭がぼやけていくのを楽しむ日々です。
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