『今年の夏至祭』

北欧 フィンランドからの手紙

今年の夏至祭もフィンランド南部の群島の一つ、パライネン(スウェーデン語ではパルガス)で過ごしました。夏至祭はフィンランド語では「Juhannus(ユハンヌス)」、スウェーデン語では「Midsommar(ミッドソンマル)」と呼ばれ、クリスマスと並んで最も重要とされている国民の祝日です。仕事などで都市に残る人もいますが、基本的な習慣として、都市部を離れて湖畔や海沿いのサマーコテージで友達や家族と過ごすのが一般的です。去年と同様、今年も夫のお姉さんとそのワイフの住むパライネンでゆっくり過ごすことにしました。

パライネンはフィンランド南西部にある群島で、合わせて1万個の島で構成されている地域です。夏は日の光が強く、周囲を海で囲まれていて大小の島がたくさんあるので、私はひそかに「フィンランドのギリシャ」と心の中で呼んでいます(この表現をほかの人が使っているところは見たことがありませんが)。人口の約58%がスウェーデン語を第一言語にする人々なので、道路の標識などはスウェーデン語が先に書かれています。

お姉さんたちがトゥルク大学の大学院を卒業して、海に囲まれたこの群島に住むことに決めたのは3年前。夫のお姉さんのヤニーナは公立図書館の司書を、ワイフのカイサはレストランのシェフをして暮らしています。海で泳ぐのが大好きな彼女たちは、寒い冬は氷の中に穴を掘ったアイススイミングをして、春から夏は毎日、それも一日に数回海に泳ぎに出かけます。そんなわけで今回のおすすめの場所へいくつか連れて行ってもらいました。

夏至祭の過ごし方は人それぞれ。思いきりパーティーをする人もいれば、静かに過ごす人もいる。私たちの場合は静寂派で、旬の食材を使ってゆっくりとワインと一緒に味わいながら夏の素晴らしさを何時間も語り、恒例のいちごのケーキを食べて、明け方までゲームをしたりして夜更かしして、沈まない太陽を称えます。

映画『ミッドサマー』を観て夏至祭に怖い印象を持つ人もいることかと思いますが(余談ですが映画の大半はハンガリーのブタペストで撮影されたようです)、実際の白夜はびっくりするほど静かで穏やかです。鳥のさえずりが遠くからこだまし、海や湖の水面が光を受けて幻想的な色をゆらゆらと揺らぎながら生み出します。太陽が一日中ずっと沈むことのなく、夜中もほのかに明るい夏の夜は、まさにこの世の楽園のよう。健やかな地球があり、豊かな自然があるからこそ、私たちの世界は美しい。すべては繋がっている。フィンランドをはじめ北欧諸国で環境保護の意識が高く、多くの政策に取り入れられているのは、こうした日々の身近な経験から来ているのかもしれません。

写真・文 : 吉田 みのり

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