『ちょっとした工夫で冬と仲良くする方法』

北欧 フィンランドからの手紙

夫のベンヤミンは、フィンランド南部にあるIsnäs(イースネース)という名前の小さな村の出身です。村の人口は500人あまり。村の中心にはカフェ兼コンビニ兼レストラン兼タイレストランのお店が一つ、ぽつーんとあるだけ。その代わりに、森と海があたりいっぱいに広がり、野生のリスや鹿は毎日見かけるし、夏にはたとえ観光客が1000人来たって採りきれないほどのブルーベリーがあちこちの茂みに実をならします。

夏は可愛い野花が生い茂り、夜になっても光りかがやく天国のようなフィンランドですが、長くて寒い冬は暗く、気が滅入りがちです。そんな実家の冬の窓辺がこちら。

「二重窓の下の部分が結露してしまうのを防ぐために落ち葉を入れておくと、落ち葉が湿気を吸って曇らないし、秋の彩り豊かな自然お色を見て心を落ち着かせることもできる」とベンヤミンのお母さんの知恵。お金をかけなくても心をちょっと明るくできる、小さなテクニックです。

ヘルシンキでは大好きな場所、Talvipuutarha(冬の庭園=温室)によく行きます。北欧ではなかなか見ることができないような珍しい南国の植物をたくさん育てているちょっと湿っぽい空間で、大きくて平たい葉っぱを生やした木々や、鮮やかな花を咲かせたサボテンを一つ一つ吟味したり、噴水のそばでマイナスイオンを浴びたり、コーヒーやワイン、クラッカーやサンドイッチなどを持ち込んでみにピクニックをしたりもできます。入場無料。何度足を運んだことか。

あとはやっぱりサウナ。冷え込んだ身体を芯から暖めて、汗をたくさんかいてスッキリします。冬はやはりサウナに入る頻度も上がります。ビールを飲みなが入る人、ビールは脱衣所や外に置いておいて休憩の時に飲む人、ビールをサウナの焼き石に投げて香ばしい小麦の香りを楽しむ人、ビールは飲まないけど焼き石にホイルに包んだマッカラ(フィンランドのソーセージ)を置いてサウナグルメを楽しむ人など、楽しみ方はそれぞれです。

冬の楽しみ方も人それぞれ。私は今年ついに切り干し大根にも手を出しました。大根の皮や端っこを乾かすだけ。たくさんためておいて、この冬は美味しい煮物を作るのです。乾燥しているからこそ、そして夜が途方もなく長いからこそできるこのひとときの楽しみ。

余談ですが、以前は苦手な人に出会ったら避けたりしてしまっていたけど、冬との付き合い方がわかったら、ちょっと苦手な人の付き合い方も工夫次第で楽しくなると気づいたような気がします。「人にはいろんな一面があり、一面だけでその人が決まるわけじゃない」という教訓を、最近観た映画『ラストブラックマン・イン・ サンフランシスコ』で得ましたが、冬も人もまさにそんな感じで、色々と視線を変えて付き合い方をアレンジしていきたいと思っています。




写真・文 : 吉田 みのり

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