『人々の暮らしにしっかり寄り添う、フィンランドの国樹・白樺』

北欧 フィンランドからの手紙

フィンランドに住んでいると、あらゆる生活の場で登場するのが国樹の白樺です。サウナで背中や肩などを叩いてマッサージに使う、白樺の葉や枝で作るヴィヒタ。キャンプや日常生活でも使われる、フィンランド北部ラップランドの先住民であるサーメ人に古くから伝わる、白樺のコブをくり抜いて作られるカップのククサ。きのこ狩りに欠かせない籠は白樺の樹皮を編んだもの。

白樺は人々の生活にしっかり役立つ道具としてもお馴染みで、香りも良く、心安らぐ存在です。春から夏にかけて真っ直ぐと育つ清廉とした姿を眺めていると、心が浄化したような気持ちになります。

私たちの居酒屋&日本酒バーのロゴにも白樺は使われています。日本の暖簾にフィンランドのシンボルである白樺を合わせたものをデザイナーのRisto Kujanpääさんに考案してもらい、ブランド・アイデンティティとして使用することになりました。

Risto KujanpääさんのInstagramから

白樺は暮らしに欠かせない生活雑貨になるほか、食材としても様々な部分を美味しく楽しむことができます。例えば白樺の樹液。さらっとした液体でほんのり甘く、健康にも良い効果があることで知られています。葉は乾燥させたものや生のままで、お茶やハーブとして古くより利用されてきました。

お茶にできる若葉が採れるのはほんの一瞬の時期。葉が開く前の、柔らかくてぺとぺとくっつくような状態の葉が最適です。ちなみに白樺は大切な木なので、自然享受法で認められている権利の中に含まれません。白樺の葉や木を採取する際は、自分の所有する土地の木で行なうか、土地の所有者の許可を必ず取ってから行ってください。

白樺のお茶の作り方:

白樺の若葉を集める。指にくっつくような葉が最適。

くずや花粉を落とすために水で少し洗う。

葉を手に取り、両手に挟んで組織を壊すように揉み込む。

ベイキングペーパーの上で2〜3時間、揉み込んだ葉を休ませ、十分に酸化させる。

葉を一つずつ、葉巻のような、または針の形になるようにまいていく。

ジップロックに入れ、空気を抜いて暖かい場所に置く。

この発酵作業の中でガスが発生するため、ジップロックが膨らんでいたらその都度ジップロックを押して空気を抜く。

3日経ったら葉を取り出し、食物用の乾燥器、またはオーブンやフライパンで葉を乾燥させる。オーブンとフライパンを使用する場合は焼かないように、低温でじっくりと乾燥させて行く。

完全に乾燥させたらガラスの瓶に保存して普通のお茶と同じようにお茶を淹れる。

白樺の甘い香りは夏のサウナを思い出す香り。若葉を摘んだ後の指の香りが爽やかで、もう絶対美味しいと確信します。白樺茶は、抗酸化作用により、動脈硬化力、花粉症、血栓症、血行促進、心臓病などに効果があると言われているそうです。

今年の6月「Uusi Sauna」で開催した居酒屋イベント「Sake Sauna」では、白樺の葉で作ったオイルを使ったデザート、「夏至祭の抹茶プリン」を作りました。抹茶プリンの上に、新鮮ないちご、ばらの花びら(庭で採れたオーガニックのもの。もちろん食べられます)、自家製の白樺オイル、抹茶塩を合わせました。フィンランドと日本、夏至祭、サウナというテーマを詰め込んだ爽やかな味で、白樺とばらの香りがフィンランドの夏の良いところを前面に語り掛けていました。

文 : 吉田 みのり

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