『フィンランドの人々から学ぶ、ひとつのものを大切に使う習慣③』

北欧 フィンランドからの手紙

フィンランドのKirpputori(きるっぷとり=蚤の市)には、色々なものが売られている。出店の方法は店によって色々ある。月極、週極、売り上げの何パーセントを払う、などなど。私たちも一度、出店したことがある。ひとつの棚を1週間借りて、売りたいものを売る。ベンヤミンが子どもの時に、クリスマスに飾っていたサンタクロースの人形や、CD、スニーカー、本、洋服…。こんなもの誰かが買うのかなと思うものも、意外に売れた。捨てる神あれば拾う神あり。2週間で400ユーロ(2020年11月末の時点で約5万円)以上の売り上げになった。

フィンランドの人々は、新しいものをなかなか買わない。家族や友達から譲り受けたり、友達から買ったり、蚤の市で見つけたりして古いものを上手に安く手に入れる。例えば、ミキサーが欲しいんだよね、と言ったりすれば、誰かが必ず「家に要らないのがあるから、もらってくれると嬉しい」と声を挙げる。ちょっと縫物をしたい場合はミシンを借りたりする。ギター、テント、バックパック、カメラ、テーブル、椅子、絨毯、音楽を鳴らすためのケーブル、デコレーション用のライト…今使ってないもので、誰かが必要だと分かった時はみんな、声を掛け合って貸し借りしたり、安価で譲り合ったりする。今までに何度そんな現場に居合わせただろう。つい先日も、友達の家に遊びに行ってディナーをご馳走してもらった時にワインを持って行ったら、ワインオープナーがない家で、隣に住んでる人に借りに行った。ちょっと借りて、30秒後にドアをノックして返しに行く。なかなか人情味溢れるやり取りだなと思う。買わなくても、誰かが貸してくれるのならそれはそれで良いのかもしれない。

「使えるものはとことん長く使う」というモットーを持つ人が多い国では、Kirppisの利用率がとても高いし、自宅にもヴィンテージのものや誰かから譲り受けたものがたくさんある。今月初めのこと。アラビア工場があった建物(現アラビアセンター)で、ヴィンテージポップアップが開催されていたのでちょっとのぞいてみた。たくさんの良品がずらり。

ひとつの国として独立したのがたった103年前のフィンランド。戦争を経て、とても貧しい国だったフィンランドが、他のヨーロッパ諸国に影響を受け、遅れて産業を推進させていくなかで生み出していったデザインは、国民が数少ない持ち物を長く使えるよう、タイムレスに愛していくためのデザインだった。センターには、そんな時代背景が分かるデザインミュージアムも併設されている(入場無料)。

以前書いたように、夫とヘルシンキでレストランを開業する計画を立てているので、レストランで使うためのヴィンテージのお皿を集めている。お店で使う予定のお皿のほとんどは蚤の市や古道具屋さんで買ったヴィンテージだ。よく行くお店の一つはヘルシンキにあるFasaani(ファサーニ)。広い店内にはヴィンテージというと聞こえが良いけど、古い食器や家具や額縁や服やアクセサリーがたくさん売られている。

「ひとつひとつの良いものを、愛情をもって使う。使えるものは壊れるまで使う。壊れても修理できるものは使う。使わなくなったら、欲しい誰かに譲る。」フィンランドの人の多くが共通して持つこのポリシーを、わたしたちも受け継いでいきたいと思っている。これからも、家財道具はもらい続けるだろうし、不要となったら捨てる前に誰かに引き渡していくだろう。そういえば私の持ってる服はほとんど古着。いつか、古着についても書いてみたいな。




写真・文 : 吉田 みのり

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