『アートは心のポップコーン」ヘルシンキーアートミュージアム 「HAM」へ』

北欧 フィンランドからの手紙

先日、ヘルシンキアートミュージアム (通称「HAM」)を訪れました。主に現代・近代美術を展示するこの美術館では、1階部分と2階部分に分かれ、およそ3~5の特別展・常設展を鑑賞することができます。今回の2階部分ではドイツ人アーティストのKatharina Grosse氏によるカラフルで特大サイズのアートを観ることができました。

物の表面、建築構造物、ランドスケープにスプレーで色付けしていく彼女の作品は、通常の二次元という概念を否定し、異なる現実の混在や境界線の曖昧さを私たちに訴えかけています。

1階部分は去年から始まり、来年いっぱいまで開催される長期の展示「トーベ・ヤンソン展」を観覧することができます。

また、フィンランド在住のブラジル人アーティストFelipe de Ávila Franco氏による「How to Postpone the End(終焉を延期させるには)」展も素晴らしかったです。テクノロジーばかりが発展し、人間性が麻痺し、精神性が断絶されたこの現実世界では、自然破壊がおそろしい速さで進み、機械化や生産性の効率化に焦点を置いた考え方が主軸となっています。Felipe de Ávila Franco氏はアートを通して、フィンランドとブラジルにおける地理的な乖離、ディストピア、社会環境危機、産業を中心とした経済とテクノロジーによって環境破壊が起こり、生態系のバランスが崩されていることを訴えています。

ポップコーンの香りがする大きな映画館「Finnkino」と同じ建物にあるHAMのモットーは「アートは心に効くポップコーン」。美術館を出た後もずっと心が満たされ、幸福感に包まれるような展示が見られる特別な場所です。フィンランド在中、これまでに何度も足を運び、草間彌生展、Ellen Thesleff展、Gilbert & George展などを訪れてきました。

普段、思考停止して受け入れていってしまう「当たり前」の概念や思想に認識論的な疑問を呈するアートに向き合う時間を持つことで、現実が引き締まったり、より色鮮やかになったりする。人生において必要不可欠な刺激をたくさんくれるのがHAMです。

文 : 吉田 みのり

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