ヘルシンキで過ごす平和なクリスマス

北欧 フィンランドからの手紙

今年のクリスマス・イブはUusi Saunaでととのってきました。フィンランドの人々にとってのクリスマスは(そして多くの諸国で)日本人にとっての大晦日やお正月に近い感覚かなと思います。掃除をして、仕事を納めて、身の回りを整えて、心を清めて、ゆっくり家族と過ごす。そのためクリスマスに入るサウナはいつものサウナよりもさらに神聖な意味を持つような気がします。そんなわけで良いロウリュを浴びようとUusi Saunaに来てみたら、この日はなんと無料でした。慈悲と慈愛に満ちたこのサービス、さすがという感じです。

館内では、この顔、あの顔。知ってる顔がたくさん。今年一年の感謝を込めて、最後に顔を出しに来ているという感覚です。本当に日本で行われる、年末のご挨拶に近いです。この場所でポップアップ居酒屋をさせてもらった今年の6月と7月を機に、オーナーやスタッフに加えて常連客など友達がたくさん増えました。みんな良い人。人間て複雑でとても美しい。サウナの中で今年を静かに振り返るという形でクリスマスを迎えられて、とても幸福な気持ちになりました。

クリスマスは毎年夫のご両親と過ごしているのですが、今年は二人と猫さん2匹でヘルシンキで静かに過ごそうと一年前から決めていたのでした。家族のもとに帰る人が多いので、ヘルシンキの街はすっからかん。レストランやカフェの99%は閉まるのでとても静かです。都会で気軽に過ごすクリスマスもたまには良いものです。ちなみにこの日はマイナス14℃でしたが、サウナの合間は余裕で濡れた髪にタオル一丁で外に出てビールを嗜みました。寒さにもずいぶん耐久性がついたものです。

翌日は友達の家に招待されてクリスマス・ディナーへ。私たちと同様、今年は家族のパニック劇やドラマに付き合うことなく、ストレス・フリーなクリスマスを静かに過ごしたいと言っていたカップルで、2人ともシェフなので豪華なクリスマス・ディナーを作ってくれました!

このクリスマスツリーはクリスマスマーケットで売れ残っていたツリーを無料でもらって来たそう。

たくさん美味しいものを食べて飲んで、ゲームをして大笑いしていたのですが、最近おじいちゃんを亡くした友達が心を内を明かしてくれて、みんなで大泣きになりました。クリスマスは楽しく過ごすだけじゃなくて、大事な人を想い、もうその人に会えない悲しみに暮れて、誰かを恋しいと思うその気持ちを心の中で大切にする日でもあると思う、とみんなで話しました。フィンランドの人々の多くは、クリスマスの日にはお墓参りに行きます。日本人にとっての大晦日とお正月、そしてお盆とお彼岸にあたるのがこちらの人々にとってのクリスマスに近いかもしれません。-

自分の歩みを振り返り、愛する人を思う。フィンランドのクリスマスは喜怒哀楽がたっぷり詰まった、つつましいけど豊かなお祝いです。

文 : 吉田 みのり

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