100年以上前に建設された、歴史的指定保存に定められている薬局を改築したワインバー「Apotek」

北欧 フィンランドからの手紙

コロナ新株の影響で、昨年末からレストランやバー、カフェなどの営業時間短縮が決まり、今年に入ってさらに制限が厳しくなったヘルシンキです。レストラン・ホスピタリティ業界の人々からは「せっかく約2年、補助を受けながらもなんとか生き延びてきたのにこの仕打ちはきつい」という声が挙がっていますが、TVや雑誌などで大活躍のスーパー・シェフであるヘンリ・アレン氏は先日、「レストランは今危機に迫られています。この制限を受けたところで、政府から補助金が出るというわけでもありません。どうか、食べに行って自分の好きなレストランを支えてあげてください。ワインを飲んで、良い料理を楽しみ、良い時間を過ごしてください」と書き、レストランという一つの文化の保存と、その貴重で豊かな文化を支える人の存在を支えるために私たちができることを提唱していました。

私もコロナ禍が始まったあたりから自分の好きなお店をテイクアウトやギフトカードの購入、実際に来店するなどできる限りの範囲で利用して来ました。それでも維持が大変になり、お店を閉めてしまうレストランもいくつかあり、好きな店がなくなってしまう悲しみも味わってきました。今回は、このコロナ禍の間に通っている中でも特に好きなワインバー「Apotek」について書きたいと思います。

1918年に建てられた、歴史的指定保存に定められている薬局を改築したユニークなワインバーが「Apotek」です。名前はスウェーデン語で「薬局」をさすとおり、100年以上前に作られた重厚感のある美しい内装や家具やレジがとてもカッコいいワインバーなのです。棚に並ぶ古い薬瓶も歴史を感じさせる存在感で、

まるで美術館でワインを飲んでいるような気持になれます。オープンしたのはコロナ禍が始まるたった半年前のこと。それでもいつも大人気で、荘厳な雰囲気のインテリアからは想像もつかないほど、カジュアルにワインバーとして利用したり、レストランとしてディナーを満喫できます。

ワインに合う小皿料理も何種類もあり、メニューはよく変わるのですが毎回遊び心がありつつクラシカルな要素もあり、とにかく品が良くシェフの人となりが分かるかのようで、とても好きなのです。

ApotekはEerikinkatuというKammpi地区のある通りにあるのですが、Töölöにある老舗のフレンチレストラン「Ravintola Carelia」の姉妹店なので、ワインはすべてワイン輸入会社「Carelia Wine」が輸入・販売しているものです。そのため、ワインの種類とクオリティはフィンランド随一だと思います。本当に美味しいワインを飲みたかったら是非ここへ。そして同時に、古き良きフィンランドの雰囲気も味わってみてください。

文 : 吉田 みのり

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