ヘルシンキの小さなマドリッド、「Vinolito」

北欧 フィンランドからの手紙

ヘルシンキの中でヒッピーと若者に愛される地区といえばカッリオだが、その地にかつて「Cafelito」という小さなカフェがあった。スペイン人の男性とフィンランド人女性が営むほんの数席ほどの小さいカフェだったが、名物の「カフェ・コン・レチェ」はじめとした、まるでスペインにいるかのような美味しいコーヒーやパンが人気で多くの人に愛されていた。大規模な水道管工事の影響で突如クローズしたけれど、そこから2年、カフェが新たにワインバーとして同じくカッリオのヴァーサ通りに誕生!ヴァーサ通りといえばパブやマッサージ屋がひしめき合い、昼夜酔っ払いがうろつくことで有名な通りではあるけれど隠れた名店も多い。我が家の近所でもあるので胸躍らせそのドアをくぐってみた。


店内は落ち着いた印象。カジュアルだけど格式高い、その絶妙なバランスが良い。スペイン人のオーナーのLuisさんは数日後にわたしたちの居酒屋を訪れてくれたのだが、その時に「ヴァーサ通りにお店を開くというのは色々な人に驚かれましたが、新しい雰囲気をもたらしたいと思っています」と話していたように、ヴァーサ通りに全然合わない!というわけでもなく、シックな存在感がヴァーサ通りに新しい展開を導いているかのよう。


18時頃、最後の光が差し込む心地よい店内を見渡すと最後の一席が空いていた。ラッキー!そして満席に。


まずは定番から。最初のワインはスキンコンタクト4日のオレンジワイン。スペインには5回行ったことがあるけれど、最後に訪れたのは2017年。本場の風を感じると嬉しくなる。


Alubias al lemón(白豆のレモンマリネ)。こういうシンプルだけど豆や野菜の旨味を引き出した料理に出会うと南ヨーロッパだなぁと思う。良質なオリーブオイルと塩があればたいていのものは美味しくなるのだということを彼らは知っている。オーナーのフィンランド人の女性は「私たちのお店は意外にもヴィーガンのお客さんからの評価が高いんです」と誇らしそうだっ


こちらはフィンランドの地元の魚を使ったボケロネスならぬシラッカロネス。「フィンランド人はもっとシラッカを食べたほうが良い」とオーナー。地産地消を推進して地元の魚を使った料理はファインダイニング世界でも再評価されている。


とっても心地よくて、不思議な空間。これから多くの人に愛される店になること間違いなし!

文 : 吉田 みのり

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