『フィンランドのクリスマスの過ごし方』
クリスマスまで残すところあと3日となりました。フィンランドのクリスマスのイメージは、日本の大晦日に近く、家族で集まって美味しいものをたらふく食べて、プレゼント交換をしたらTVの前に集まってぼんやりしたりして過ごします。(TVの他にゲームをしたり、墓地を訪ねたり、ひたすら飲んだり、という過ごし方もよくあります)
今年は感染症もあり、高齢者との接触は避けるようにという勧告もあることから、泣く泣くおばあちゃんやおじいちゃんには会わないクリスマスを選択している人も多いようです。
第22回の記事ではクリスマスの時期に食べられるお菓子や飲み物について書きましたが、今回はこれまでに私が食べてきたクリスマス料理をちょこっとご紹介したいと思います。
・Joulukinkku(ヨウルキンック)
日本のクリスマスといえばクリスマスチキンですが、フィンランドやスウェーデンの場合はクリスマスハムを食べます。すでに完成したものを買ってきたり、大きな豚肉の塊を何時間もかけてオーブンでじっくり焼いたりと、家庭によってこだわりは様々。とはいえ私の場合は、今までクリスマスを過ごしてきた家庭にベジタリアンの人が必ずいたこともあり、ハムなしでお祝いしたことも多々あります。伝統とはいえ、自分たちのライフスタイルの変化に合わせて取捨選択をするのは日本のお節料理への考え方にも似ているものがあると思います。
・Graavilohi(グラーヴィロヒ)
サーモンを塩と砂糖でしめて作ります。ビーツで赤い色を付けたり、セイヨウネズ(ジュニパーベリー)の実で香り付けをしたりする家庭もあります。いわゆる昆布じめやしめ鯖と似たようなものです。こうすることで保存がきき、味が引き締まってさらに美味しくなります。
・Laatikko(ラーティッコ)類
”laatikko”はフィンランド語で「箱」。蕪や人参、じゃがいもなどをマッシュしたものをオーブンで焼いたキャセロールです。日本のお節と要領は似ていて、クリスマスの前までに何箱も用意しておいて、何日も続けて食べます。
・何らかの魚
ニシンの酢漬け、ニシンのマスタード漬け、スモークサーモン、イクラなどの魚卵、などなどなど、加工した魚も並びます。干したタラなどの白身魚を灰汁に漬けてゼラチンのようにしたLutfisk/Lipeäkala(ルートフィスク/リペアカラ)を食べる家庭もあります。地方や家庭によって伝統はさまざま。でも自分の家のクリスマス料理がいちばんだという人が多いです。やっぱり家族と一緒に食べなれているものを年々食べる、その安心感がいちばんのご馳走なのでしょう。ちなみに、私にとってのいちばんのご馳走は翌日や翌々日に残ったサーモンを炊きたてのご飯の上にかけ、いくらも盛って醤油をかける残り物スペシャルです。なぜ、醤油はこんなにもサーモンに合うのか…。
話は戻りますが、用意したお料理はすべて、大きなテーブルに並べて盛大にお披露目します。そしてビュッフェスタイルで各自で取って好きなものを好きなだけ食べます。食べるテーブルとは別のテーブルに並べる家もあります。ちなみに「ビュッフェ」のことを日本では「バイキング」と呼んだりすると聞いたら、仮にもバイキングの末裔であるスウェーデン系フィンランド人たちは大爆笑していました。確かに英語では通じないですよね。
調べてみたところ、1957年に帝国ホテルの社長であった犬丸徹三さんが、旅先のデンマークで食べ放題のサービス「スモーガスボード」をみて、これを気にいり日本に持ち込んだのが最初だということです。北欧に対する当時の印象や豪快に食べる様からバイキングという言葉が用いられ、「インペリアルバイキング」というサービスとして始まったのが始まりだとか。
ちなみに、もみの木がたくさん育っているフィンランドでは、今のところプラスチックのクリスマスツリーは見たことがありません。
木の下にクリスマスプレゼントを置いて、24日の夜にみんなで開けあいっこをします。サンタさんを呼ぶ家庭では、サンタさんが持ってきてくれることも。サンタクロースのバイトはかなり儲かる仕事で、ギターを弾いて歌うことができたり面白く話せる人にはぴったりの期間限定の仕事です。大体12月の終わりに仕事を募集している人に事前に連絡すると、15分50ユーロくらいで家にやってきてくれて事前に用意しておいたプレゼントを小さな子どもたちに配ったりしてくれます。
ちなみにフィンランドでは自分でプレゼントをラッピングすることも多いので、今の時期はラッピング用品もお店に充実しています。私の場合はナチュラル素材を使ったラッピングが好きなので、茶色のベーキングシートに麻の紐を使ったラッピングなどをします。
プレゼント交換が終わったら、ケーキやチーズを食べたり、ゲームをしたり、TVで毎年恒例で流れる映画を観たりして神聖な夜を過ごします。今年はどんなクリスマスになるのか、今からとっても楽しみです。
写真・文 : 吉田 みのり
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