野草のシーズン到来!ヘルシンキで気軽に楽しめる野草①ムラサキベンケイソウ

北欧 フィンランドからの手紙

春の日差しが強くなり、どんどん日が長くなっているヘルシンキ。現在の時点で日の長さは15時間以上です。日の出は朝の5時46分、日の入りは夜8時52分。つまり、夜が来るのが本当に遅いです。

自然の中を散策していると、美味しい野草にひょっこりと遭遇する機会も増えてきました。この時期が一番楽しいのです。たくさん種類がある食べられる野草の中でも、ひときわよく採って食べるのがムラサキベンケイソウ(マンネングサ属)です。フィンランド語ではMaksaruoho(マクサルオホ)、またはIsomaksaruoho(イソマクサルオホ)。

光が良く当たる岩場に生えていることが多く、風味は豆苗やナッツに似ていて、百合根とか銀杏のようなねっとりとした肉厚な食感です。皮膚の炎症や痛みを軽減するとされ、古来より皮膚疾患などに使用されてきたそう。

食感を生かして生で食べるのが一番美味しく、酸っぱいソースが合います。こちらはアーティチョークをオーブンでローストして、オリーブオイルとレモンの皮、マンネングサ属と和えたシンプルな料理。

あらかじめ数日マリネしておいた春の旬の野菜ホワイトアスパラガスの上から、塩と砂糖で〆た黄卵をチーズのようにしておいたものを削って、ムラサキベンケイソウを合わせたりもします。

野草は摘んだ直後に食べられるので、香りや食感が新鮮で存在感があります。それに合う食材や味を見つけるのがとても楽しい作業の一つ。そして何より食卓が安価に完成します。

庭に自生するムラサキベンケイソウとvoikukka(タンポポ)の茎と草の部分のガーリック炒め。ごま油と美味しい醤油をひと垂らしすれば20円もしない一品の出来上がり。

でも冬が終わりを告げ、大地に野草が生えてきたらまず一番に作りたい料理はやっぱり野草の天ぷら。セイヨウイラクサ、イワミツバ、ムラサキベンケイソウなど、生えたての柔らかいものを誰もいない森から摘んできて天ぷらにします。日本の春に蕗の薹やたらの芽、山うどを求める感覚ととても似ていて、生命力たっぷりで土の匂いさえ感じる山や野の幸は春のぜいたく品。苦みと甘みとほっこりした柔らかさと、地球のすべてと調和したような豊かな風味が身体に染み渡る美味しさです。野草を自分で摘む時の大地との触れ合いも心地よく、自然を享受する喜びと畏敬の念を同時に感じることができます。

写真・文 : 吉田 みのり

RELATED ARTICLES

PICK UP