『ロシアとフィンランドの国境からすぐそばの都市、ラッペーンランタへ』

北欧 フィンランドからの手紙

出張でラッペーンランタに行くことになった。フィンランド南東部、南カレリア地方にある中心都市であるラッペーンランタは、ヘルシンキから電車で2時間ほど。中世から賑わってきた歴史ある街で、特に旧市街は歴史的建造物も多く、その美しさと遥か昔から繫栄してきたという歴史のロマンに惚れ惚れとする。

スウェーデン統治時代から軍事都市の色彩が濃く、現在も陸軍士官学校などがあるそうで、実際に旧市街は要塞で囲まれ、夫のベンヤミンも「ラッペーンランタには一度だけ兵役の練習で来たことがある」と思い出を話していた。

ミーティングはサウナでしよう、と提案してくれた商談相手の方。フィンランドではビジネスの話はあえてサウナでする伝統もある、とは聞いていたが、本当にこの身に起こるとは。市内の公衆サウナに行くのかな、と思っていたら、車で連れて行ってくれたのは貸し切りで湖を臨める大きなサウナだった。

一日中降っていた雨が、着いた瞬間に晴れ、瞬く間に晴れ間が広まる。

サイマー湖は19万以上ともいわれる湖を所有するフィンランドが誇る、国内最大の湖。静寂の中に、春の到来を喜ぶ鳥たちの鳴き声だけが響く。湖の周りには小舟をしまう小さくてカラフルな小屋だけが点在し、人の気配はない。こうした自然を目の前にすると、本当に美しい国だと改めて思う。

サウナは電気式のものと木を燃やして暖めるものの二つ、そしてジャグジーもある。サウナでちゃんと商談もして、汗をかいて一緒に湖に飛び込んだ。この日は気温11度ほどで、湖の水は刺さるように冷たかった。泳ごうと思ったけど指先もつま先もすぐに痺れるように刺激を受け、耐えられず10秒ほどで水から上がったら、不思議なことに皮膚がカーッと熱くなり、サウナ前は結構寒いと感じていたのにその後は濡れた水着のままで何分も外で過ごせていた。

フィンランドでアイススイミングが若者を中心にブームとなって数年。私も、氷こそ張っていないけれど、寒中水泳の目標を果たすことができた。その後は湖の見えるコテージに宿泊。目が覚めたら一面に広がる湖が、嬉しかった。

こんな清々しい景色を臨める部屋で朝を迎えられたら、誰もがその心地よさのとりこになるだろう。フィンランドのサマーコテージは基本的に湖や海のすぐそばに建てられていて、朝起きるとシャワーを浴びる代わりに水中に飛び込んでリフレッシュして一日を始める習慣がある。

もし出張でなかったならば、きっと湖に飛び込んで身体を洗って、太陽の下で身体を乾かし、本を読んだりして一日を始めていただろう。そんな夏が来るのが、今から楽しみでたまらない。

無事に出張も終わり、ラッペーンランタでイベントをする話を進めているところだ。今年は何度も訪れることになりそう。

写真・文 : 吉田 みのり

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