『森の中の週末のパーティーと家族の時間』

北欧 フィンランドからの手紙

週末はお義父さんの70歳のお誕生日のお祝いに、夫の実家のIsnäs(イースネース)へ行きました。

フィンランドの公用語は2つあり、フィンランド語とスウェーデン語です。そのためほとんどの市町村にはフィンランド語とスウェーデン語の名前の2つがあるのですが、Isnäsは歴史を通してスウェーデン語話者の方が圧倒的に多い村であったこともあり、スウェーデン語の名前しかありません。フィンランド語にするならJääniemi(ヤーニエミ)、日本語にするなら氷岬(こおりみさき)かな、なんて妄想したりします。ちなみに夫の家族も叔母さんの再婚相手以外のすべてが第一言語をスウェーデン語とする人々です。人口500人ほどの小さな村で、人間の数より野生の鹿の数の方が多い、そんなのどかな土地です(よく庭や森に出没します)。

森に囲まれているものの地元の人は森にはそこまで足を運ばないので、ブルーベリーやラズベリー、きのこなどの森の恵みも採り放題です。私たち家族とレストランでご提供する用に摘んでも食べきれないほど。

家族で会う時は必ずといっていいほどケーキを用意するフィンランドの人々。今回は夫のお姉さんやお姉さんのワイフ、お義母さんが力を合わせて庭のルバーブなどを使ってお義父さんへお誕生日ケーキを作っていました。

上に乗っているハーブやたんぽぽは庭から採ったものです。

元庭師のお義母さんが心を込めて作り上げた庭は、春から夏にかけて数十種類もの花が咲き誇っています。私たちも一年ここに住んだことがあるのですが、その時には小さな農園も一緒に作って、じゃがいもや人参のほか、ビーツやズッキーニ、トマトや茄子やねぎ、豆やパプリカなどたくさんの野菜を育てました。

夜ごはんは庭でバーベキュー。フィンランドのバーベキューは日本のバーベキューと違って、焼く人は大抵一人。一気に焼いてから食べます(日本だとみんなで囲んで焼肉のように食べるような…?人にもよるのかな)。暖かい日はバーベキューの後ろにあるパティオで座って食べ、肌寒い日は家の中に持っていて食べます。この日は屋外で食べました。

デザートはお義姉さんのワイフが作ってくれたルバーブとメランゲといちごのデザート。とっても美しかったです。

家族で丸一日のどかに過ごせて、ご両親もとても嬉しそうでした。「何もない田舎でつまんないでしょう」とご両親は言うけれど、大自然が何よりの見どころで宝物の美しい土地で楽しくゆっくり過ごせるのはとても幸福なことです。

私は暖かい家庭で育ったという記憶があまりなく、少しだけ思い出せる幸福な時間が6歳までの短い時期だったので、ずっと家族というものの概念にコンプレックスを抱いていました。最近になってようやく、自分で見つけた新しい家族のもと、穏やかな時間を楽しむ喜びを味わえるようになっています。生きてると、想像もしないものが手に入ったり、手をすり抜けていったりします。後悔だけはないように生きたいなと月並みですが思います。

写真・文 : 吉田 みのり

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