#09 K:Köttbullar(ミートボール)

スウェーデン ABCブック

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Köttbullar  
ショットブッラル 
名詞 
スウェーデンの代表的な料理。学校給食からクリスマスの食卓まで一年中を通して食される。つけあわせにはじゃがいもと酢漬けのきゅうり。ブラウンソース、コケモモのジャムが定番の組み合わせ。 
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先日、友人からこんな話を聞いた。彼の取引先の男性が「スウェーデンに来て、口に合う食べ物があまりなかったが、この前ようやく見つけた。あんなに美味しかったのは初めてだ」スウェーデンに対する褒め言葉だったのだろう「けれど」と友人は言った。その料理がKöttbullarであることに続けて、友人は笑いながら付け加えた。「彼、トルコ人なんだ」。僕がその笑いのツボがわからず、キョトンとしてると「知らなかったのか。Köttbullarはトルコから来たんだよ。だから彼の口にあったんだろう」僕はすぐに合点がいった。「もしかしてカール12世?」 

もちろん肉を細切れにして、香辛料やら野菜やらを混ぜ、ボール状にした食べ物は世界中にある。どこが起源かなんて特定は難しい。実際、このトルコ起源説もSvenska Institutet(国立スウェーデン研究所)がそう主張しているものの、歴史的証拠がない、と首を振る研究者もいるらしい。ただ、いずれにしても、決して的外れではないはずだ。というのは、僕が思い浮かんだカール12世、この18世紀のスウェーデン国王は、コーヒー文化を亡命先だったトルコ(オスマン帝国)から自国に持ち帰った人物として知られているからだ。上流階級の嗜みとして、飲料としてのコーヒーそのものと、それにまつわる調度品、マナーをふくめて。フィーカの歴史を書くなら、最初の最初に現れる人物だ。 

トリビアルな話ついでに、もう一つ。これを書くにあたって、昨日の夕食にKöttbullarを「自分で作った」。合い挽き肉にパン粉、卵、玉ねぎ少々、香辛料はなし。付け合わせにマッシュポテトとリンゴンベリーのジャム(以前記した砂糖漬けのやつ)、そしてブラウンソース(Brunsås)。 

この名を冠した「Landet Brunsås(ブラウンソースの国)」というテレビ番組が2011年にあった。Brunsåsをスウェーデン食文化の象徴として、つまり最もポピュラーなソースのひとつなのに何でできてるかってみんな知らないよね、という皮肉をこめて、スウェーデンの食文化の不思議をコメディータッチで紹介した番組だった。 

その中で僕が今だに忘れられない数字がでてくる。それはスウェーデン人が1日で料理に費やす平均時間についてだ。1947年に4時間あったものが、1960年台に2.5時間になったという。そして、番組当時の2011年にはどうなったか。想像してみてほしい。なんと17分だ。番組では80年代から進む過剰なホビーへの欲求が料理時間を圧迫した、と説明する。 

僕が昨日Köttbullarを「自分で作った」とあえて書いたのは、そういう意味からだ。もちろん、いちから作ったものの方がはるかに美味しい。けれども、ジムやその他諸々、ホビーのための貴重な時間は削られてしまう。スウェーデンを代表するメニューだが、今では自分を含め多くの人にとって、Köttbullarは作るものではなく、買うものなのだ。 

Take care. Noritake 

写真・文:アケチノリタケ
スウェーデン生活は、2007年の北極圏のキルナで、極夜のなか幕開け。月日は流れ、今はストックホルム郊外の群島地域で家族3人の生活です。クラフト、デザイン、ライフスタイルの分野を中心に、日本とスウェーデンの架け橋になるような活動をしています。互いの文化の同じ/違うところにふれながら、自分の輪郭がぼやけていくのを楽しむ日々です。
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