『フィンランドの公用語、フィンランド語とスウェーデン語』

北欧 フィンランドからの手紙

連載第5回目の記事『トーベ・ヤンソンの映画「TOVE」』でも触れましたが、フィンランドの公用語はフィンランド語とスウェーデン語のふたつあります。また、準公用語にサーミ語もあります。私の夫やその親戚、また友達はフィンランドで約6%以下を占めるスウェーデン語を母語に話すスウェーデン系フィンランド人なので、家族の集まりでは基本的にスウェーデン語が主に話されますし、また習慣などもフィンランド語を話す集団とは異なる習慣を踏襲していたりします。

とはいえ、地域によってはスウェーデン語が全く話されない地域もあれば、スウェーデン語の方が通じる地域もあったり、オーランドのような土地ではスウェーデン語じゃないと通じないような場所もあります。また、ヘルシンキのようにスウェーデン語話者が多いにも関わらず日常会話は基本的にはフィンランド語で話したり、コード・スウィッチング(2種以上の言語の切り替え)しながらどちらの言語も混ぜて話したりする人が多い地域もあり、公用語がふたつあるとはいえ、その使用頻度や地域、感覚などは何層ものグラデーションに分かれています。

ヘルシンキでは、スーパーやカフェ、近所の人と挨拶するときなど、基本的な日常会話はフィンランド語になりますので、移民としてヘルシンキに住む場合はまずはフィンランド語を学ぶことが妥当な選択となります。

私の場合は、日本に住んでいた時に神楽坂の近くの北欧留学センターでフィンランド語とスウェーデン語の両方を一年ほど受講していました。この時は特に北欧に住む予定もなかったのですが、連載第1回目でも少し触れたとおり、フィンランドには幼い頃から馴染みがあったこと、またフィンランドに住む友達が多かったこともあり、趣味として学んでいました。当時、外資系の広告会社に勤務していたのですが、激務かつハリのない日常で唯一の喜びを与えてくれたのが言語習得でした。

フィンランド語とスウェーデン語の両方を学ぼうと思ったきっかけは、仲良しの友達が、皆スウェーデン語系フィンランド人だったことからです。その友達に大体50人くらい友達を紹介してもらって、東京やパリからフィンランドに遊びに来るたびにスウェーデン系フィンランド人の人々と過ごす機会が多かったため、彼女たちの言語を理解したい、という思いが自然と強まり、またマイノリティの言語を学ぶという重要性も感じたことから、二つを同時に学ぶことにしました。

両方学んでみた感想ですが(語学に終わりはないので今でも絶賛習得中です)、私の場合はフィンランド語よりもスウェーデン語の方が断然愛称が良く、半年もしないうちに会話が聴き取れるようになり、1〜2年程度で日常会話が話せる程度になりました。その理由にはおそらく、フィンランドで話されるスウェーデン語はフィンランド語の発音の影響を受けており、スウェーデン語で話されるスウェーデン語に比べて発音しやすく、また綴りと発音の違いという混乱が生じにくいため、また、スウェーデン語は英語に似ていて、またフランス語にも似ている言葉が多いことから、フィンランドに比べて比較的馴染みがある言語であるため、というのがあると思います。

夫と出会って初めてのデートに行った時、まさか夫は私がスウェーデン語が話せると思っていなかったそうなので、すごく驚いたそうです。ヘルシンキに住んでいると基本的にはフィンランド語さえ話せれば特に問題なく暮らせるとは思うのですが、たまにスウェーデン語のみでサービスを受けたい人などに遭遇した時には重宝します。また先ほど書いたように、家族や友達との集まりの時には学んでおいて本当に良かったと思います。

フィンランドに住む前はフランス留学をしていて、8年ほどフランス語を学んでいたので、まさか自分が英語・フランス語のほかにフィンランド語とスウェーデン語に手を出すなどとは思っていなかったのですが、始めてみたらとっても楽しく、役に立つことばかりなので、これからも第5外国語に留まらず、学びたい言葉をどんどん学んでいきたいと思っています。思い立ったら吉日。語学はやりすぎて損するということがまずない領域なので、やりすぎていきたいです。

学び始めの頃のフィンランド語のノート



写真・文 : 吉田 みのり

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